2016/DEC/8 「ナイジェリア大使館の狂犬」

ヤウンデの週末はフランス三昧だった。土曜日にマリオンにパーティーがあると誘われて、知人のハウスパーティーにつれていって貰ったが、ヤウンデ在住のフランス人の集まりで、話し相手もいなくてかなり気まずかった。別に英語を話せる人がいないというわけではないが、やはり皆集まったときにはフランス語で気兼ねなく会話をしたいのだろう。日曜にもバーベキューがあると誘われたが、同じことになりそうで断った。

マリオンの家は大きな庭があり、旦那のデニスと3人の娘と暮らしていた。お手伝いが来て洗濯や掃除、庭の手入れをしてくれ、夜間はセキュリティーもいる。ここで暮らす外国人には普通なのかもしれないが、多分フランスにいたら彼らはこんな暮らしは出来ないだろう。

子供たちは英語を話さないし、何よりアジア人と話したこともないであろうから、一切話しかけてこない。一番小さな子に関しては、常にこっちは怪しむような目でみてくる。二番目の子は、家にいてもヘッドフォンをして、ローラーブレードをはいているので、そもそも話ができる状態ではない。

マリオンは家族に相談することもなく、家に泊めてくれることを決め、一体どういう説明があったかも分からない。デニスはあまり英語が得意ではないようで、率先的に話してはこないし、直ぐに話もなくなってしまうので、最初に話してからは会話はない。この家ではどこか居場所がないような感覚をおぼえる。

水曜にナイジェリア大使館へビザを受け取りに行くと、受付のおばさんが「まだ出来てない」と言う、「え!水曜って言ったよね?」と言うと「本当はレジデンスでなきゃ取れないのよ!」と逆切れした。本当に何なんだコイツの態度はと思ったが、超低姿勢で「いつ貰えるんですか?」と尋ねると「知らない」とそっぽを向いた。

ナイジェリア大使館を後にして、直ぐに日本大使館へ。こんな時は日本大使館から電話してもらうに限る。

荒田さんに説明すると、直ぐに電話をしてくれた。荒田さんは戻ってくると「15分後にかけ直せって言われちゃいました」と言う。きっとあの受付だ。日本の領事担当者にかけ直せとは、本当に図々しいヤツだ。そのあと荒田さんがかけ直すと、今度は「明日の朝にかけ直せ」と言われて切られたとさすがに仏の荒田さんも困惑ぎみだった。

翌日荒田さんからメールがあり、「翌朝かけ直したところ、領事は大変忙しいと言われました」と書いてあった。あんなに客のいない大使館を見たことがないが、なぜ忙しいのか意味不明だ。取り合えずできることは、ナイジェリア大使館へ通うことだけなので、午後2時に行ってみると、例の受付は「座って待て!」とだけ言い、なにも答えてくれない。他に説明は一切なく、どうしたらいいか分からない。すると、暫くして中へ通された。身なりのいい若い領事担当らしき男がいて、話をすることが出来た。この男は受付の100倍話のわかる男で、旅の理由や、これまで行った国、ナイジェリアに知り合いはいるかなど、質問をして、最後にビザを出すことは可能だと言った。お礼を言って、ビザを貰おうと思ったら、「数日後には渡せる」とわけの分からないことを言い出した。そして受付のおばさんを呼び、外へ案内するようにと指示した。

「なんとか今日貰うことはできないか?今のでビザが貰えることは決定したならあとはシールを貼るだけだよね?」と粘ると、後ろから受付のおばさんが「だったらナイジェリア人が日本大使館で、早くビザをくれって言えば、日本大使館はビザをだすのか?」と怒鳴り出した。そのあともおばさんの怒りはエスカレートして、領事の前でわけのわからないことを怒鳴り続けた。一切無視しして、領事に目を向けると「できるだけ早く出す」と小さく答えた。

おばさんはヒートアップし過ぎて、外まで案内する役割を完全放棄し、結局、領事が扉を開けてくれて外に出してくれた。完全に狂犬だ。外国人に恨みでもあるのだろうか?スペイン人の旅人はこの調子で9回も通うことになったのだ。気の毒すぎるが、自分にも同じことが起きかけていると考えると一気に気分が重くなった。最初は簡単に取れそうだと思ったが大間違いだった。ヤウンデのナイジェリア大使館には狂犬がいる。これは日本大使館に置いてある情報ノートで今後一番大事な情報になるだろう。


そのあとヤウンデに戻ったクンと近くの飲み屋で落ち合い、更にエミリアとジュリアと合流した。エミリアは現地の大学と交換留学で来ているのだが、来年の3月までストライキで学校は閉まると今日発覚したと話した。4月にドイツに帰国なのでもう帰るまで学校はない。一体どんな交換留学なんだ!エミリアは憤慨していたが、ナイジェリア大使館の狂犬のことを思い出すとアフリカはこういうところなんだなーと不思議と同情は沸いてこなかった。






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