2015/JUL/13 「カンダラマ」

スリランカは本当に観光立国だ。仏教遺跡のあるアヌダーダプラ、ダンブッラなどは観光客だらけですこし嫌気がさしてきた。遺跡自体は見ごたえのあるものでアヌダーダプラにはブッダガヤで仏陀が悟りを開いた際にその下で瞑想していたという菩提樹の分木が植樹されてある。本当ならとても貴重なものだ。

スリランカに来る前からバワのホテルのうちいくつか泊ってみようと思っていた。ただし、値段も巨匠なのでいくつかを選んで泊ろうと考えていた。バワの建築には実は詳しくないので知っていたのはカンダラマホテルくらいだった。そのカンダラマホテルはタンブッラの街から10キロのカンダラマ湖のほとりに建てられていた。

タンブッラの岩窟寺院を見終わった後に昼食を食べてから、スリーウィーラー*と交渉して片道500ルピーでカンダラマホテルへ行ってもらった。未舗装の赤茶色の土の道を走ること20分、左に湖が見えてきた。右はジャングルとその後ろには岩山が見える。なかなかの自然だ。

車寄せにスリーウィーラーで横付けして、バックパックを背負って下りる。ここの宿泊者でスリーウィラーで来る人はいないようで、かなりはずかしい。レセプションのバックパックを背負った汚い格好の旅行者を見る目はとても冷たい。だが、予約が確認できると丁寧な対応でボーイがバックパックを部屋まで運んでくれた。


建物は岩山に擦り付くように建てられた片廊下のボリュームで客室はすべて岩山と反対側のカンダラマ湖を見下ろしていた。廊下は半外部で岩山との間には十分なスペースがあり菩提樹や大きな岩からなるダイナミックなランドスケープをつくり、廊下には岩がところどころ入り込んでいた。ボーイによるとこの建物は全長1kmくらいあるそうだ。これはインド、カラグプルにある世界一長い鉄道駅のホームやベネズエラ、ギアナ高地の世界一高い落差の滝エンジェルフォールと同じくらいだから驚きだ。


部屋はスタンダードなのでバスタブはなかったのが残念だったが、ところどころバワらしい個性を見て取れた。


カンダラマは外部の地形、自然の取り入れ方が絶妙で建物自体は張り出た水平スラブと箱だが、自然との調和が高いレベルで成し遂げている。これは自然との調和を謳った、ぐにょぐにょした建築とは対照的で、建物を曲げて緑化しても自然にはならないと物語っているようだ。不自然な自然を作るのではなく、建物と自然の境界を消すということに専心している。

岩の露出したエントランス、緑に埋もれるファアード、湖へ消えるプールエッジなどすべてが高い完成度を持っている。それらはすべての配置がとても良く考えられいる結果だと思った。バワは設計を始めるときにヘリで敷地を散策したらしい。それを聞いて納得するくらい良く計画されたホテルだ。それに増して周りには圧倒的な自然があり、湖のほとりで像が水浴びをしていたりする。部屋の窓を開けているとサルが何匹も入ってきて危ないくらいだ。廊下型のホテルでこんなにすばらしいものはちょっと思い出せなかった。


唯一、バワお気に入りアーティストによる巨大な安っぽいコンクリート製コブラが外部ラウンジ脇に置かれ、内部を見つめているのは理解不能だった。

*自分でググりましょう。








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