2016/SEP/25 「アフリカで唯一のスキー場」

朝の7時にハリスが、タクシーランクまで送ってくれた。ハリスは朝5時から仕事に出たが、7時にわざわざ戻ってきて、送り届けてくれた。なんていいやつなんだ。

タクシーランクには、10人くらいのレソト行きのタクシーを待つ人がいたが、タクシーはなかった。一時間ほど待つとプレトリアやヨハネスで走っているハイエースの大きいバージョンのトヨタ・クオンタムがやって来て、皆乗り込んだ。アフリカ全土でミニバスとして活躍する中古のハイエースだが、狭くてあまり快適とは言えない。それが南アではクオンタムという一回り大きな車種になり、椅子の数しか人も乗せないので大分楽だ。

クオンタムは町から30分ほどのレソトボーダーへ行き、皆を下ろして帰っていった。南ア出国手続きをして、ゲートを出るとトレーラーハウスが止まっているだけで、何もない。ここでレソト側のバスが来るのを待つらしい。トレーラーハウスが軽食屋だったので、コーヒーとリンゴを買い、他の人達と一緒に座って待つことにした。ここはずいぶん景色のいい国境だ。

しばらくするとハイエースが一台やってきた。これがレソトの北部の町、ボタボテに行く。南アからレソトに入り、クオンタムからボロイハイエースになったのは、国の豊かさを反映した感じがした。


ボタボテまでは未舗装で、三回ほど橋のない川を渡らないと行けなかったが、道中景色がよく、素朴な村が見れて良かった。ボタボテで泊まろうかと思っていたが、モコトロン行きのミニバスがまだあるというので、そこまで進むことにした。

モコトロンは4時間半ほどかかり、着いたときには既に日が暮れかけていた。道中、噂にきくアフリカで唯一のスキー場が見えた。山あいの乾燥した大地に、1本のスロープが見える。幅10m、長さ500mくらいだろうか。リフトらしきものはない。雪は一切見当たらず、茶色の草に覆われた地面が広がっている。アフリカ唯一のスキー場というか、アフリカ唯一のスキースロープだ。どれだけの客が来るのか分からないが、下の方にスイスにでもありそうな、ロッジが見える。とてもシュールな景色だ。もう2ヶ月くらい早くここにくれば、アフリカでスノーボードが出来たなーと少し心が惹かれた。

モコトロンは宿を調べてなかったので、町の人に聞いて、数件あたり、Boikhethelo Guest Houseという宿が、150ロチ(1,095円)にまけてくれたのでそこに泊まることにした。ツーリスト用の高い宿でレソト伝統住居を模した建物になっている。大分大きな部屋でベッドが4つもあった。これで150ということは本当に客がいないのだろう。ここのおばちゃん達は人懐っこく、陽気で、一人しかいない宿泊客の為に色々と世話してくれた。

飯を食いに出ると、通りで何処からか名前を呼ぶ声が聞こえた。暗かったので、誰がいるのか分からなかったが、声は近づいてきて、隣の敷地からだと気がついた。よく見ると女の人が立っていて、ウガンダのカンパラで会った、アヤさんだった。5ヶ月ぶりくらいだ。この暗闇でよくわかったなーと感心した。アヤさんはGrowという宿に泊まっていて、そこはテントが張れるらしい。さっき目の前を通ったときは看板がなく、宿だとは気がつかなかった。アヤさんのテントは、前に見たアフリカ縦断者御用達のチャイナテントではなくなっていた。フライシートの付いたちゃんとした物に見える。聞くと、前のは骨も折れ、雨で水没し、買い換えたらしい。あのテントは軽くて安いが、雨にも風にも弱いのが難点だ。

一緒に夕飯に行こうと思ったが、週末でレストランはすべての閉まっていて、辛うじて開いていたスーパーで食パンと鯖の缶詰を買って、Growのキッチンで食べた。

もう10年くらいワーホリやボランティアを挟みながら旅を続けているアヤさんは、この後、モザンビークのマプトで、魚市場の中にオープンする日本食居酒屋のオープニングを手伝うという。最近、マプトの魚市場の経営権を日本企業が買ったらしく、その会社が市場の魚を使って刺身とかを提供する店を出すという。アヤさんは知り合い経由で、3ヶ月ほど手伝ってくれと頼まれたらしい。

南アではスーパーでも寿司が売っているほど浸透している日本食だが、モザンビークでは見るとこはなかった。北部しか回ってないが、あの国はこの辺りでマラウィに並ぶ、貧しさだった。アフリカに山ほどいるJICA隊員と大使館員、南アからの出張者を目当てにしてるのだろうか。ただ、モザンビークはツーリストは少ないが、東アフリカで一番の海を持ち、かなりポテンシャルの高い国だ。ひょっとしたら今後の発展を確信しているのかもしれない。その日は、久しぶりの知り合いとの再会で、遅くまで旅の話で盛り上がった。






















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