アフリカにはとても有名な滝がある。世界三大瀑布の一つヴィクトリアフォールだ。カイロから南下してきてこれを見ない人はいないだろう。だが、そういうところに来るといつもテンションは下がる。たくさんのツーリスト。ツーリストのためにできた町。そういうのはバックパックを背負っているとどうも馴染めない。夏休みの短期旅行ならきっと楽しいのだろう。ツーリスト用のレストランで気前よく散財することのできない、ストレスが滞在を不快にする。
ヴィクトリアの滝はその名もヴィクトリアフォールズという町にある。これはこの町が滝の観光のためにできたことをあらわす。ブラワヨからは夜行列車で朝に着いた。ブラワヨのウェルカム隊員坂本さんは夕飯をご馳走してくれ、その後、わざわざ駅まで見送りに来てくれた。アフリカの寝台車というのも興味あったが、ジンバブエの寝台車も今までに見たことないキャビンのつくりで期待を裏切らなかった。
ヴィクトリアフォールズの駅に到着すると、宿まで歩き、チェックインをして、庭にテントを張った。夜行明けだから、今日は休もうかと思ったが、歩いていける距離なので、今日、滝に行ってしまうことにした。
ヴィクトリアの滝はザンビアとジンバブエの国境になっていて、その7割がジンバブエ側だ。なので見るなら断然ジンバブエ。ザンビア側には、リビングストンアイランドという滝の上の島まで行き、滝が落ちる部分にある天然のプールで泳げるというとてもスリリングなツアーがあるが、それは水量の少ない時期に限定されるらしく、今行けば、ツアー一行一人残らず滝つぼへ吹っ飛ばされるだろう。
ヴィクトリアフォールがイグアスやナイヤガラの滝と違うのは、滝が上流から流れてきたザンベジ川に対して横に開けた地面の裂け目に落ちていくとこだ。ザンベジ川は滝の手前で数百メートルの幅になり、その割れ目に落ちてゆく。割れ目は細長く、滝の対岸とは20メートルほどしか離れていない。そのためジンバブエ側の滝を見るためのトレイルは、その割れ目に沿って滝の対岸に作られていて、滝をすぐ目の前で見ることができる。だが、近すぎるので全景を見られるポイントがない。あまりに細い割れ目に滝が落ちているので、ザンビア側にもそういったポイントはないだろう。しかも、水飛沫が半端なく。全身水びたしになる。雨季が終わったばかりのヴィクトリアフォールズは、これでもかというくらい水飛沫をあげている。
トレイルにはいくつもビューポイントが設けられていて、もちろんビューポイントからの景色はいいが、ヴィクトリアの滝を見るのは、たぶんヘリが一番だろう。高いので乗らなかったが、たぶん森の中を流れるザンベジ川が地面にできた大きな亀裂に落ちてゆく様は壮大なことだろう。ヴィクトリアフォールズに限らず、大きな自然は空からに限る。以前ベネズエラのギアナ高地へ行ったときに、落差世界一の滝、エンジェルフォールのベース、カナイマへのセスナが、ギアナ高地の奥地へ運ぶ物資を積んでいたため、カナイマよりはるか奥の集落へ寄ってからカナイマへ到着した。たまたまそのセスナに乗り合わせたおかげで、ギアナ高地をセスナで一周することができた。そのときに見た数百におよぶテーブルマウンテンとそこから流れる数千もの滝、地上に広がる密度の高いジャングルとテーブルマウンテンの上の森は、ヒマラヤ、ソルクーンブと共に今までに見た中で3本の指に入る絶景だ。
最後は水を被りすぎて、途中からはカメラも動かなくなった。なかなか楽しい体験ではあった。公園を出て、ザンビア側にかかる国境の橋へ行ってみた。橋の手前でパスポートを預けて、橋の中央へ歩いて向かった。橋の真ん中ではバンジージャンプの客が橋から飛び降りている。いろいろなアクティビティーがあるが、これだけはイマイチ楽しさがわからない。高い金払って、橋から飛び降りる気にはどうしてもならない。いつかわかるときが来るのだろうか。
明日はヴィクトリアフォールマラソンが行われるらしい。宿にはやたらとJICAの隊員が泊っていたのはそのためだ。橋を渡ったザンビアのリビングストンからも隊員がやってきていた。きっと現地に住む彼らからしたら、またとないビッグイベントなのだろう。もうこの町でやるべきことはない。明日はボツワナへ抜けよう。
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