2015/MAY/12 「ボルネオ島一熱いシャワー」

コンテナの中の2段ベッドの上の段から、夜中に発病した下痢で3回起きてトイレに行かなければならなかった。日本から持ってきた下痢止めを飲み、なんとか朝を迎えた。

シャワーを浴びに外へ行き、シャワー/WC小屋に入る。肌寒いから水温が低ければやめようかなとひねると信じられない熱さのお湯がでた。「おおー!」と一人で盛り上がっていると、隣のシャワーからも似たような叫び声が聞こえてきた。しかし、いざ浴びてみると温度調節にはかなりのテクニックが必要で、しかたなしに我慢して高温で浴びることに。浴び終えて外に出ると、隣で浴びてたオランダ人も出てきて「ボルネオ島で一番熱いシャワーだ!」と笑ってこっちを見た。


登山の準備に着替えて外に出ると、コンテナの背景にキナバル山がそびえていた。昨日は雲で見えなかったが今朝は快晴だ。あまりの高さに本当にこれに登るのかと弱気になる。

ラウンジへ行き、朝食にオムレツを作り、トーストにチーズを乗せて焼き、コーヒーを入れて食べているとJungle Jackがきて、「キャンセルが出たから今日登れるぞ」と教えてくれた。まったく同じものをもう一度作り、今度はすべてトーストに挟んでサンドイッチにして、ランチ用の紙袋に入れた。テーブルにあったバナナ2本も一緒に入れた。


われわれのガイドは二人で、キナバル山の麓に住む原住民だった。先頭を歩く、見た目と名前のギャップが大きいジェニファーと名前は忘れてしまったが最後尾を歩く無口の男のガイドだ。ジェニファーは週に2回もキナバル山に登頂し、さらに山頂でSIMカードを売るというビジネスウーマンだ。ガイドの二人は登山口で合流し、本当に簡単に登山計画を説明した。そこで皆ジェニファーに続いて歩き始めた。

中腹の山小屋はラバン・ラタという標高3200mに建つ食堂小屋を中心に、いくつかの宿泊小屋が回りに建てられている。ほぼすべての小屋はステラ・サンクチュアリ・ロッジが所有し、例外的にひとつだけがJungle Jackの手配する登山者が泊るロッジだった。食事はビュッフェなので、どちらの登山者もラバン・ラタで食べることになっている。といってもJungle Jackの小屋に泊るのはせいぜい20名程度で残りはすべてステラなので、ほとんどはステラの客である。普通キナバル山登山=ステラという認識だと思う。

朝食の時にJungle Jackはみんなに60RMキャッシュバックできると言い出した。彼の説明だとラバン・ラタの食事(夕食×1朝食×2)は60RMで登山費用には、その60RMの食事券が含まれているという。そして、それは食事のときにほとんどチェックされないらしい。つまり、その食事券を買わなければ、われわれが払う登山費用から60RMを返すというのだ。ただし、見つかった場合は各自の責任となる。大抵、食事券のチェックは最初の数名だけであとはチェックされないらしい。なので1630から始まる夕食には、すこし遅らせて1730から行けというのが彼の作戦だった。


1日目の登山は軽いので1330には山小屋に着き、おのおの好きなように時間をつぶした。皆で時間を確認してから1730に夕食へ出かけた。首から下げる登山許可証はストラップの部分がステラの客のものとは違うので、食事には持っていかないように言われたのを思い出してベッドの上に投げた。


Jungle Jackの言ったとおりチェックはなく、ステラの客同様にビュッフェをいただくことができた。山で食べるものとしてはなかなかの食事だ。食事の後、夕日を堪能してから小屋に戻り寝る準備をした。せっかくの登山なので新調したMombelの寝袋も持ってきたが、残念ながら登山で日の目を見ることはなさそうだった。ぎゅうぎゅうに配置された2段ベッドはかなり攻めた構造になっていて、上の人が寝返りをうつと、上の段が落ちるんじゃないかというくらい大きなきしむ音をあげ、その恐怖に一晩中おびえるスリリングな山の夜を演出してくれた。





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