2015/NOV/8 「アテネの丘に」

アテネには10年前に来たことがあるので、チュミ設計のアクロポリス博物館だけ見ようと考えていた。これは10年前にはなかったものでギリシャの数少ない現代建築のひとつだ。

アテネの町はあまり記憶になかったが、歩いてアゴラのあたりに着くと、見覚えのある景色に出た。そこには広場があり多くの人が座って休んでいた。地下鉄の駅もあり、大変な賑わいだ。10年前ここにはアフリカ人たちが折りたたみテーブルでサングラスを売っていた。警察が来るとテーブルをすばやく折りたたみ一目散に逃げていたのを思い出した。アフリカ人たちはいなかったが、似たようなサングラスは今もいたるところで売られている。彼らはもっといい仕事を見つけることができたのだろうか。

博物館のあるアクロポリスの裏側への道をすすむ。カフェや通りにはたくさんの観光客がみられる。この時期でもアテネと南の島には観光客が来ているようだ。裏の広い遊歩道にはたくさんのストリートパフォーマーがいたが、ここでは禁止されているらしく、警察につぎつぎと解散させられている。操り人形を見ていた子供は目の前で操り人形のおじさんが突然警察に怒られて、キョトンとしている。町中落書きだらけのアテネでもなぜかストリートパフォーマーには厳しいようだ。

遊歩道のすぐ脇には昔雑誌で見たことのある外観の博物館が建っていた。博物館の下には遺跡があり、コンクリートの杭で浮いたエントランスデッキから見られるようになっていた。3層の箱がずれて重なっているというアイデアはディティールの表現で大きく失敗しているように思えた。アイデア、デザイン(設計)、実現(施工)という3つのプロセスはなかなかすべて上手くいかないものだが、アイデアとデザインまでは設計者の能力しだいだ。この手のデザインはアイデアの視覚化をしくじるとガッカリしたものになる。チュミのアクロポリス博物館も上手くやったとはいいがたかった。

博物館を出て、まっすぐ歩くとアクロポリスの入り口があった。昔入ったことがあったので迷ったが、せっかくなのでもう一度見てみることにした。入り口のゲートからの坂を登り、神殿の門とニケ神殿に出た。ここはあまり覚えてなかったが、そこから中に入るとパルテノン神殿への緩い坂にでて、昔来た時のことをはっきり思い出した。全く同じ光景だ。
ゆっくりと歩いてまわる。何故か昔見たときより建物が増えた気がする。よく見ると新しい石材が足されて、建っている柱や梁が見える。ひょっとしたらどんどん作り直しているのかもしれない。この分ならガウディのサクラダ・ファミリアより早く完成しそうだ。でも完成しちゃっていいのだろうか


アクロポリスを出て、手前の岩に登ってみた。上には多くの人がいて、そこからアクロポリスを眺めていた。森の上にそびえる岩山のアクロポリスはすばらしく、神殿の門の階段を降りる人が良く見え、スケールを与えていた。10年前に来た時は何故いろいろな建築家がこれを見て感動したと言うのかわからなかった。見に来てよかったなーと思った。







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