2016/MAR/19 「過酷な山頂アタック」

山頂アタックは標高4541mにあるエレナ小屋からだ。昨日、ブジュク小屋から5時間かけてエレナ小屋に到着した。ブジュク小屋からの登りでは、湖と渓谷が眺められる素晴らしいビューポイントがあった。急な峠を越えるとエレナ小屋があり、目の前のMt.Bakerの逆側には下山ルートの渓谷が広がっていた。この山域は本当に広い。ここまで来ると、さすがにもう樹木はなく。岩と苔だけだった。小屋からはマルガリータ峰は見えなかったが、他の山の頂にも氷河があるのが見え、テンションがあがる。やはり岩山はかっこいい。

朝の4時に簡単な朝食を食べてからエレナ小屋を出発した。夜中に雪が降ったようで、岩肌の上に薄い雪が被さり、それが凍りついて、危険極まりなかった。滑るのでゆっくりとしか進めず、氷河に着くまでの登りにかなりの時間を要してしまった。氷河の手前でアイゼンを装着して、ピッケルを握り、氷河に飛び乗った。氷河は二つあり、最初の氷河は比較的平らなので、ロープは必要ない。氷河を歩いているうちに、あたりがうっすらと明るくなり始めた。霧がかっているので周りがすべて赤く染まって、不思議な感じだ。まるで赤い空気の中を歩いているようだ。

氷河を渡りきると、また岩場が待っていたが、ここも昨夜の雪があり、アイゼンを着けたまま歩くと、雪が薄く、岩にアイゼンの刃があたり歩きづらかった。しばらく進むと少し下りがあり、そこを降りると、そこには雲海が広がっていた。太陽が上がり始め、雲の隙間から光を出して、あたりを照らしだした。雲の下に広がる谷には、湖が雲を反射しているのがみえる。すばらしい景色だ。後ろを振り返ると、マルガリータ峰と2つ目の氷河が見えた。かなりの斜度だ。いったいどこから氷河に取り付くのだろうか。

ガイドのデニスを先頭に、急な岩の斜面を登り、氷河の端にたどり着いた。ここでデニスがハーネスにロープを結びつけ、全員をつないだ。まず彼が、目の前の氷河を上り始めた。かなり角度があり、なおかつ大きなクレパスの横を登らなければならず、危険極まりない。ガイドが登りきり、ロープを張ってから後を追う。ピッケルを刺しながらアイゼンの前爪で一歩一歩登る。これはもう普通の旅行者が気軽にこられる山ではない。全員がロープが垂れない用に距離を置いて、氷河を登り続けた。先頭のデニスは、雪で隠れたクレパスの場所にXマークを書いて進むので、そこは踏まないように登る。ガイド達のハーネスはあまりにぼろぼろで、壊れた部分を紐でつないでいる。これで誰か落っこちたら、彼らのハーネスはもたないだろう。しかも、デニスのアイゼンは旧式で何度も紐が解けて、そのたびに立ち止まり結びなおした。よくこんな装備でこんな山を登るなーと思ったが、ウガンダではアウトドアの装備を購入できる店はないので、あるものを使うしかないのかもしれない。

氷河を登りきると、大きな氷柱があり、そこはまるで雲海の上に浮いているかのようだった。その氷柱の横を通り、裏側の雪の斜面をトラバースすると、あとは頂上まで急な岩場になった。標高は5000mを超え、ここが最後の登りだったが、空気の薄さで息切れが激しく、苦戦した。30分ほど登ると、岩山の先端にマルガリータと書かれた看板がみえた。ようやく山頂だ。残念ながら、下から上がってきた霧に追い抜かれ、山頂はガスって、何も見えなかった。時間を見ると10時をまわっていた。予想よりもはるかに時間がかかった。こんなに大変だとは思ってなかったが、降りはもっと危険だろうと不安がよぎった。しかも今日はエレナ小屋からさらに先の小屋まで降らないとならない。いったい何時間歩くのだろう。

待っても晴れる気配はないので、15分ほどで山頂を後にした。これまで1日に歩く時間はそれほど長くなかったが、山頂アタックの日だけ信じられない過酷さだ。ただし、この日の景色は前日までとは比べ物にならないほど美しかった。たぶん今までアフリカで見た中で一番の景色だろう。





















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