2016/FEB/29 「ケニアの地平線」

ウクンダから戻ると小黒さんのホテルの現地会社社長の佐藤さんからメールが来ていて、急遽小黒さんのホテルを見に行くことにした。ホテルはタダになるわけでもなく、マサイマラ国立公園の西端にあるホテルまでは自力で行かなければならないが、20年以上も前に小黒さんが苦労して建てたというホテルには無性に興味がわいた。小黒さんと一緒に出張したときには親の遺産金で建てたとしか聞いてかなかったが、調べるとムパタというティンガティンガの弟の画家との出逢いから始まっていること、建てたときの話が伊集院静の小説「アフリカの王」にもなっていて、ここまで来て見ないわけには行かないと思った。

小黒さんのホテルへは通常、プロペラ機で最寄りのエアーストリップと呼ばれる草原の中の滑走路へ降り立ち、そこからはホテルの車の送迎らしいが、プロペラ機は片道180ドルと適さなかったので、ナイロビからマタツを乗り継いで行くことにした。これはニューケニアロッジのスタッフもさすがに行き方を知らなかったが、佐藤さんが親切にもマタツでの行き方を教えてくれた。

佐藤さんから「ナロックからのマタツは1本しかなく、10時くらいに人が集まり次第出てしまう」と聞いていたので、目一杯早くナイロビを出てナロックへ向かうことにした。4時半に起きて、荷詰めし、昨夜作っておいたサンドイッチを半分たべた。残りは道中のランチにする。

チャイを沸かしているとナナちゃんが見送りに起きてきた。彼女とはベオグラードで会って以来、四か月ぶりに再会したが、食中毒で寝込んでいたので話す機会はあまりなかった。しばらくナイロビで休養してからまた南下するらしい。ナナちゃんの目覚ましのせいで起こされたチアキちゃんも迷惑そうな顔で見送りに起きてきた。二人にお別れを告げ、昨日調べたマタツ乗り場へ、まだ真っ暗のナイロビダウンタウンを歩き始めた。

二日前にロンゴノットへ行く時にマタツの乗客が集まるのを一時間半も待ったので覚悟していたが、5時過ぎに乗場に着くと、第一便のマタツに乗る乗客がすでに集まっていて、すぐに出発することができた。

ナロックには8時半に到着。そこからマラリアンタ行きのマタツに乗り継ぐハズだが、マラリアンタ行きのマタツには誰も乗ってない。露天でチャイを飲んで待っていたが、10時になっても乗客は二人しか集まってない。このマタツは14人集まらないと出ない。。。

運ちゃんに出発時間を聞くと多分12時くらいと言う。んーー なんのために朝4時半に起きたのだろう。12時と聞いてかなりガッカリしたが、マタツが出発したのは更に一時間後の午後1時過ぎだった。運ちゃんは全く急ぐ雰囲気はなく、マサイ族の村に物を届けるためにしょっちゅう止まり、携帯で友達と話ながら、終止マイペースだった。

途中から道はなくなり、回りにはゼブラやらトムソンカゼル、ヌーが現れ始めた。他にも猪やアンテロープなどサファリツアーで見たより各々の個体数は多いようにさえ思える。右側の草原にはキリンが四頭走っている。もう完全にサファリだ。300ドルも払ったサファリが、なんとマタツに乗って見られる。このマタツの路線は半端ない。しかも、運ちゃんは写真を撮ると、気を使って車を止めてくれるというサービス付だ。ライオンやチーターは見れないが、そんなにお金をかけたくない人にはこれで十分な気がする。何よりサファリのように回りに他の車が走ってないのが良い。

三時間程たつと集落っぽいところに差し掛かり、窓から外を眺めていると「田付様 Mr TATSUKI」と書かれたボードをもったマサイ族の男がいた。ホテルのスタッフがバイクで迎えに来ると言っていたのはこの人に違いなかった。

小黒さんのホテル「ムパタサファリクラブ」はマラリアンタの裏の山の上に建つ、マサイマラを見下ろす高級ホテルで、スタッフのバイクに荷物を縛り付け、2ケツで45分の場所にあった。道中、大きなアンテロープやシマウマ、キリンが現れ、バイクを降りて、スタッフと散策したりしたので到着したのは5時過ぎになってしまった。

迎えてくれた市原さんはここに15年も住んでいるケニア愛がにじみ出てる人で、ホテルの案内をしてくれた。チーターに呼ばれてケニアに来たというのも本当のように聞こえた。24年前に建てられたホテルの建物は、清掃がいきとどいて、とても綺麗で、よくこんなところに建てたなーというくらい立派な物だった。客室からは山の下のマラリアンタ村、曲がりくねりながら流れるマラ川、そして地平線まで広がるサバンナが眺められた。夕暮れに照らされた何処までも続く草原は、昔、想像していたケニアのイメージに重なるように一致した。このサバンナはタンザニアまで繋がっている。この時期は多くの動物が草を求めて、タンザニア側にいるはずだ。彼らにはケニアもタンザニアもないことだろう。

東京の小黒さんからはサプライズがあり、夕食の時にワインを1本つけるように市原さんに伝えてくれていた。以前ベトナムへ出張で一緒しただけなのに、こんな心配りまでしてくれるとは感激だ。

サファリツアーで一度来た、マサイマラに今度は自力でマタツを乗り継ぎ来て、普段泊まっているゲストハウスの15倍もの宿泊費のホテルに泊まることになったが、地平線を見ていると本当に来てよかったと思えた。ここには想像していたケニアがある。












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