2015/JUN/28 「別れ」

朝、外が明るくなってきたので起きて顔を洗いにキッチンへ行くとキッチンの床で警官が一人寝ていた。キッチンに入る前の床にも一人寝ていた。どうやらこの警察署は小さすぎて署員用のベッドは無いようで、おのおの寝やすい場所で床に寝ているようだ。コンクリートの床でよく寝れるなーと寝てる人をよけながら顔を洗い外へ出ると、みんなはすでに起きていた。「おはよう」と言うと軍隊が「昨日の夜大きなトラックが着いた」と言い。トラックの運ちゃんが起き次第話をしに行くと言う。署長も起きていてしばらく話をした。70年代に大きな津波があったらしく、津波の後この町にも3人の日本人ボランティアが4年間くらいいたという。所長の日本への好感度がそこからかーと納得した。

8時に町の唯一のホテルへトラックの運ちゃんに話をするために軍隊と向かった。運ちゃんはまだ部屋にいるとのことだったがホテルスタッフが呼んでくれて話ができた。値段は聞いていたとおり一人50キナだったが、いろいろ用事を済ませる必要があったらしく出発したのは午後2時過ぎだった。日曜でお店もやってないので残ってたビスケットを食べ、武蔵丸がくれた椰子の実のジュースを飲んで、実を食べた。椰子の実はなかなかおいしくてそこそこ腹にたまった。

トラックは4トンくらいの大きさで荷台に荷物と寄せて積み、残ったスペースに20人くらいが乗った。ウィウェックへの道はほとんどが舗装されてないか舗装されていても穴だらけでトラックはかなり揺れた。途中何度も橋の架かっていない河を渡り、一度河の中を上流へ向かって走ることもあった。椰子の実以外に食べ物もないのでトラックに乗る前に武蔵丸が大量に仕入れてきた椰子の実をもらい食べて空腹をしのいだ。

昨日船の上でセグを食べるのを見た軍隊はすごく喜んだようで、今度は「ビートルナッツは試したか？」と聞いてきた。ビートルナッツはアジアの発展途上国で食べたられているチューインガムのようなものだ。皮を歯でちぎって中の身を口に入れよく噛み、出てきたジュースだけを吐き出し、別の食物（彼らはマスタードと言っていた）の茎と貝殻から作る白い粉を一緒に食べる。変色して赤色になるのでみんな口の中は真っ赤だ。噛んでるときに唾液が出るのでしょっちゅうつばを吐くがそれも真っ赤で道のいたるところに跡がある。東ティモールにいたときに市場のオバチャンに進められて試したが、苦いのですぐに吐き出したことがある。軍隊にそのことを伝えると「ちゃんとした食べ方をしてないからだ。教えるから食べろ」と言って実を渡してきて。仕方ないなーと歯で皮を破り実を口に入れて噛んだ。やはり苦い。軍隊は汁を吐けといいビニール袋を広げる。汁だけ吐くのは難しく実も半分くらい吐き出すと軍隊は「実はダメだー」とあわてて説明する。チリ毛がそれを見て大笑いした。他の乗客も注視してたようで笑っている。武蔵丸が横から茎と白い粉を渡してきたので口に入れて噛んだ。苦味はだんだん消えていったがこれの何処がいいのかさっぱりわからない。しばらく噛むと口が唾液でいっぱいになり、ビニール袋に吐くと真っ赤だった。それを見た軍隊は「そうだー」とまんべんの笑みで「お前はローカルと同じようにセグとビートルナッツを食べるいいやつだ！」言った。セグはともかくビートルナッツは食べさせられただけだが、取り合えず「ありがとう」と返した。

8時をすこし過ぎたくらいにトラックはフェンスで囲まれた道沿いの建物がある場所で止まった。そのトラックはそこまでで、そこからは車を乗り換える必要があるようで、フェンスの中からランクルが一台と数人の男が出てきて、トラックの荷物をランクルに積み替えた。ランクルには6人だけ乗り、あとはそこから散っていった。軍隊が「エアポートロッジというホテルがあるが、予算内か？」と聞いてきた。「値段がわからないからわからない」と答え、「とりあえず一番安い宿に行きたい」と伝えた。軍隊はドライバーと話し、ランクルは発進した。道の両脇に建物がぽつぽつ見えはじめたところで一度右折し、近くの鉄のゲートの前でランクルは止まった。よく見るとゲートには看板があり、「WEWAK GUEST HOUSE」と書いてあった。下に値段も書いてあり一人100キナとあった。4500円かーとがっかりしたが一番下に。バックパッカー料金あり一人50キナとあった。バックパックを降ろしてもらい、チリ毛、軍隊、武蔵丸にお別れを言って鉄の扉の中へ入った。ヴァニモから1泊2日彼らとともに行動したので急に寂しさを感じたが同時にすがすがしさもこみ上げてきた。