2015/JUN/22 「ネズミ宿」

良いホテルに泊れて安心していたが、このホテルには壁の裏や天井裏にすごい数のネズミがいた、それが夜中に走り回るので天井からも壁からもネズミの足音が聞こえる。薄いベニヤの裏を歩く音はかなり大きくトレッキングの疲れがなければとても寝れたものではない。夜中にサイドテーブルあたりでガサガサ音がして、まさかと思ったが朝起きるとビスケットの袋がちぎられて、中のビスケットが3分の1くらい無くなっていた。オーナーに部屋を変えてくれというと「他は空いてない」といい、ディスカウントしてくれたこともあり、しぶしぶ部屋に戻った。

取り合えずPAPUA.COMの藤原さんに会いに行き、トレッキングの報告をした。藤原さんは相変わらず忙しそうだったが、WIFIをまた使わせてくれてたのでワメナからジャヤプラ行きの航空券を取った。

夕食を一緒に食べる約束をして宿へ戻ると部屋の入り口脇のテーブルに置いていた、ビスケットの残りが袋ごとなくなっていた。そして奥のクローゼットの下からガサガサと音がした。覗き込むとビスケットの袋があり、その奥で黒い動物が動いていた。急いでレセプションに行き「まだ部屋の中にネズミがいる」と伝えると中華系のオーナーはパプア人スタッフを与えてくれて、そのパプア人と大急ぎで部屋に戻りクローゼットを持ち上げた。するとネズミはすでに逃げていてビスケットの袋だけが転がっていた。壁のコーナー部分の巾木が一部なくなり、いくらでも出入りできそうな穴が開いていた。オーナーに伝えると、薄い小さなベニヤ板を2枚持ってきてその穴を上から塞ぎ巾木と壁の間に差し込んで止めた。しかし壁のベニヤは下地がないのか押せば凹むようで、どうしてもまた他の隙間ができてしまう。釘もないのでしっかりと止めることもままならない。そもそも持ってきたベニヤも正形ではなく腐って千切れていた。それでもオーナーは「これでもう大丈夫」と万遍の笑みを見せた。パプア人スタッフは周りをほうきで掃いて持ち場へ帰っていった。


とりあえず、前に勧められたジウィカにでもいくかと、通りでベモに乗り、パサールバルと呼ばれる市場まで行ってみた。そこでジウィカ行きのバスを探したが、それよりも市場が活気があり楽しいそうだった。

市場の中へ入り見てまわると大勢のダニ族の女の人が野菜や果物を売っている。買い物をしてるダニ族もたくさんで、少数だがコテカをつけた男性もタバコの葉を売ってたりした。ここはダニ族の市場という感じで彼らの生活の雰囲気が感じられ実に楽しい場所だ。


市場で時間を使いすぎて、ジウィカ行きのバスに乗ったのは12時過ぎになってしまった。ジウィカはトレッキングでたずねたキリセの100倍腐った村だった。他に客はいないようだったがこちらに気がつくなり年寄りたちは着替えてきて、いっきに20人くらいに囲まれた。驚いたことにおばあさんたちも胸をさらけ出して写真撮るか?見たいな調子だ。年寄り以外もいろいろなものを家から持ってきて、聞いてもないのに馬鹿げた値段を言ってくる。


この村にはミイラがあるようで「ミイラか?見たいか?300,000Rsだ」という感じだ。村の中のみやげ物屋まで引っ張られていったが、どれも古いものには見えなかった。「うん。写真も撮らないし、ミイラも興味ないから」と言って村を出た。近くに塩田があり昔ながらの塩の精製が見れると聞いていたが、雨が降ってきたので露天に避難した。しばらくするとランクルのヒッチに成功してなんとかワメナに戻ってこれた。もう夕方だった。


6時半にPAPUA.COMに行くと藤原さんは店を閉じているとこで、シャッターの鍵を閉めると古いランクルに乗りこんだ。聞くと初代のランクルで1978年製だ。同じ年生まれかーと感傷にひたる。36年経っててもまったく問題ないそうだ。ただしパワステがないのでUターンのときに異常に回転半径がふくらんだ。

藤原さんがよく行くという食堂でメシをご馳走になった。藤原さんが始めてワメナに来たのは1981年でその時は町で服を着てる人はいなかったという。1991年に戻ってきたときにはすでに8割がた服を着ていたそうだ。彼はもともと登山家でヨーロッパやヒマラヤの8000m級の山も登ってたらしい。10年前にタスマニアンタイガーがまだニューギニア島にいると聞いてワメナにやってきたらしいが結局タイガーは絶滅していた。「日本には帰らないんですか?」と聞くと「もう家族もいないしね。ずっとここにいると思うよ」と答えたが声には寂しさが感じられた。藤原さんは宿までランクルで送ってくれた。


ジャヤプラへの飛行機は明日だ。今夜もネズミの足音を聞きながら寝るかとベッドに横になった。穴も塞がったし、どこからでもかかって来いと大の字になり天井を見つめた。







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