2016/FEB/2 「アルバミンチ ジェネラル ホスピタル」

アディスを朝5時に出たセラムバスは午後2時過ぎにアルバミンチに着いた。アルバミンチはエチオピア南部の中心的な町で、これ以南は民族が多くすむエリアになる。いわゆる南部民族巡りの拠点だ。エチオピアで日本人がよく行くのはダナキルツアーと南部民族巡りだろう。特に民族は女の子に人気が高く、会った日本人女子の殆どは期間に違いはあるが、民族巡りに行くと言っていた。また、南部は人が悪いので有名で、南部の民族巡りをして、エチオピア人が嫌いになる旅人をよく聞いていた。

バスを降りるとすぐに客引きのような男達が来て、「ムルシ族か?」「ジープがあるぞ」「安くガイドと車をアレンジできる」と言い寄って来た。砂埃で悲惨なことになったバックパックをはたいて、そこを離れてから、それでも追いかけてきた客引きに安いホテルへ案内してもらうことにした。

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軒目に綺麗な3階建てのホテルに連れてこられたので、そこを300から200ブルに値切って決めた。アルバミンチでホットシャワーまで付いているこの部屋で200はかなりお得だ。しかも、オーナーはかなりフレンドリーで、一階にはローカル達で賑うレストランが併設されていた。

アディスにいるときにネットで狂犬病について調べ始めると、ジプチで猫に噛まれたのが急に不安になってきた。狂犬病は哺乳類全般で保有している可能性があり、傷の種類、場所により発病の有無が異なるらしい。WHOの定める基準では犬でも猫でも狂犬病汚染地域で野良に噛まれた場合はカテゴリー3(一番悪い)となり、緊急狂犬病ワクチン接種、傷口の洗浄、破傷風ワクチン接種、狂犬病免疫グロブリン投与を勧めている。狂犬病免疫グロブリンは聞いたことがなかったが、ウィルスが体内に拡がるのを抑える薬で、事前に予防接種をしていれば不要らしいが、基本的に高価で、何処にもストックは無いらしいので、これは忘れることにした。そして、噛まれてから、既に4日経っているが念のためにワクチンを打つことにした。

アルバミンチにはこの辺りでは一番大きなアルバミンチ ジェネラル ホスピタルがあり、行ってみると、すぐにドクターに会えた。ドクターに状況を説明すると、「狂犬病ワクチンはないので、破傷風ワクチンだけ打とう」と言われた。やはり、アディスで打つべきだったなーと処方箋をもって薬局に行くと、そこの薬剤師は「狂犬病ワクチンあるよ」と言う。「???」「無いってドクターに言われたけど、、」と言うと「俺がドクターに話してくる」と行って、薬剤師はドクターの部屋に入っていった。しばらくして出てきた薬剤師は「ワクチンを打つことは可能だ」と教えてくれた。エチオピアのドクターはよくわからない。

薬剤師曰く、エチオピアの厚生省では狂犬病ワクチン接種回数がWHOの推奨する回数より遥かに多く、最初の14日間、毎日接種が必要で、そのあとも10日毎に40日まで接種が要ると言う。これではアルバミンチで14日間病院通いになる。「何でWHOの基準と違うの?何処の国も普通、24時間以内、3日目、7日目、14日目、28日目の5回だよ。」と聞くと誰も分からないと言う。「政府がそう言ってる」の一点張りだ。試しに「ここのワクチンをWHOの回数で打ってもいい?」と聞くと「いいんじゃない」と言うが、声には知らないからどっちでもいいよという感じがある。回りのドクター達も「多分効くよ」「大丈夫大丈夫」とかなり他人事だ。

噛んだ猫は狂犬病には見えなかったし、既に4日経っているので、そもそも不安を和らげる程度のものにしかならないだろうと、結局、WHOの基準で打ってもらうことにした。

冷蔵庫から出てきたワクチンは小分けされた瓶でなく、乳白色の液体が大きな瓶に入っていた。そこから毎回注射器で吸って使うのだろう。何度か狂犬病ワクチンは見たことがあるが、それらとは全く異なる外観だ。しかもなんか沈殿してるし。不安は和らぐより、むしろ、どんどん増えてきた。そんなことを考えている間にドクターは腹に注射器を深々と刺し、無事最初のワクチン接種を終えた。普通のワクチンよりも明らかに量がおおく、注射した箇所は腫れ上がり、触るだけで痛みが走った。こんなの見たこと無い。

病院は多くの患者で溢れ、ベッドやら何やら色々な物が不足しているように見えた。殆どの部分が半外部の病院は、衛生面に目をつぶっているようにしか思えない。ワクチンを打ってもらった小さな部屋には他に3人ほど患者が横になっていて、一人は腕の手術を受けている最中で、ドクターが皮膚をハサミで切り、中の何かを針で縫っている。明かりが足りないので周りを囲んだ親族が携帯のライトで必死に術部を照らしていた。足を骨折したらしい男はベッドに横になっていたが、折れた足にダンボールを包帯で巻きつけてギブス代わりしていた。エチオピアでは大きな病気になりたくないと心から思った。


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