2016/APR/16 「バオバブの森の狩人」

クワルダは時間通りにバイクタクシーを連れてやって来た。雨が降れば、延期と伝えていたが空は晴天だ。クワルダは登録は後で行けばいいと言い、そのままブッシュマンの村へ直行することになった。

早速、バイクタクシーの後ろに乗って出発。最初は未舗装の道路を進み、別の村に入った所で、道を外れ、サバンナの中を走る。遠くに幾つもなだらかな丘が見える。道は悪く、凸凹のオフロードだし、所々に現れる柔らかい砂地にタイヤを取られる。

しばらく行くと、サバンナの中に大きな川がうねっているのが見えた。まさかと思ったが、バイクはそのまま赤土を含んだ濁流の川に突入。深さは50cmくらいはあり、くるぶしまで水に浸かった。運ちゃんの靴はずぶ濡れだ。バイクは何とか中洲にたどり着いた。そして、運ちゃんが靴を脱いでから、また濁流に突入。途中ふらふらして、止まりそうになるが、無事渡りきった。晴れててこれだと、雨が降ったら、ここを渡るのは厳しいだろう。そもそもここまでの道も雨が降れば、泥道になり、ランクルでも苦労するだろう。マンゴーラ村に戻るまで天気がもつのか不安になった。

しばらく行った所で、干上がった川を渡り、さらに進むと、バオバブの木が見え始めた。ここのバオバブもケニア同様、マダガスカルの有名なバオバブとは少し異なる形をしている。バオバブはどんどん数が増えて、道の両側にマダガスカルのバオバブ街道のように生えている場所もあった。そこを過ぎると、少し先にひときわ大きなバオバブの木がどっしりと構えていた。こいつは他と違い、根本から幹が別れて、空へ向かって広がっている。とんでもない大きさだ。

バイクはその下でとまり、クワルダがブッシュマンの村があるか見てくると言って、茂みに入って行った。ブッシュマンは定住のための住居をもたず、動物を追って移動して暮らしている。雨季には洞窟やバオバブの木の穴に住んでいるという。彼らは本当はハッザベ族と
いい、アフリカのもっと南から移動してきた狩猟民族らしい。タンザニア以南にはハッザベ族以外にもブッシュマンと呼ばれる人達が点在すると聞いたことがある。狩猟と木の実、根菜などで暮らしていると言うが、今でもそれだけで暮らしているかは微妙だ。

クワルダが戻ってきて、すぐ先に住んでるので行こうと言い、歩きで茂みを進んだ。そこには木の枝で作った小屋が5、6個あり、木の下で5人くらいの男が火を囲んでいた。何人かは狩りに使うであろう矢を作っている。クワルダに彼らの言葉での挨拶を習い、試してみると皆返事をしてくれた。全員と握手する。かなりフレンドリーだ。特にこちらを意識した行動も取らず、タバコを吸ったり、火にあたって暖を取っている。エチオピアの民族巡りで、お金にしか興味のない、無愛想な民族達に写真を取れと追い回されたので、ブッシュマンの自然な反応には感動だ。エチオピアの民族達にも見せてやりたい。

村の中を歩いて回ると、インパラの皮が干してあったり、干し肉が吊ってあった。女性は割と普通のアフリカの格好をしていた。昔は腰蓑だけしか着てなかったらしい。男も動物の皮を身につけているが、その下に洋服を着ている。まー無理して昔の格好しなくていいと思う。

しばらくすると、狩りに出ると言い、四人の男が弓矢を持って、歩き出した。そのあとを村にいる異常な数の犬が一斉に後を追う。え!この犬達も行くの?と思ったが、犬達も狩りで大事な役目を負っているのかも知れない。

ブッシュマン達はどんどん茂みの中を進む。サンダルでは危ないからとクワルダが彼の靴を貸してくれたが、靴にトゲが刺さり、何度も靴を脱いで抜いた。ブッシュマンは歩くのが速く、追い付くため時々走って追いかける必用がある。

ちょっと行ったところで、雨が降ったときに避難する木に作った洞穴を見せてくれた。穴のなかで色々説明してくれるが、言葉が全く分からない。彼らの言葉は今までに聞いたことのない響きで、何度も舌を鳴らしながら話す。初めは話しをしてると気がつかないほど、原語的な響きはない。しかも、皆一斉に話すので賑やかだ。

穴を出て、また歩き出した。バオバブの木が沢山生えている場所に出た。彼らは低い木に近づき、枝をチェックしながら、茂みの中を進む。どうやら鳥を探しているようだ。リーダー的な男が弓を構えた。音をたてずに矢を放った。結果は失敗、矢は空へ向かって飛んでいった。他の男達も散って、木にとまっている鳥を探している。インパラとか捕れないかなーと期待していたが、ここにはいそうもない。あの干してあったインパラの皮は何処から手に入れたのだろう。

それからも何度も木にとまっている鳥に矢を放ったが、ことごとく外した。ブッシュマンは思ったより狩が下手だ。

リーダーがまた、鳥を見つけたようで、低い木の下で弓を構えている。かなり低い木なので、鳥までの距離は多分3mもないだろう。勢いよく矢を放つと、とまっていた黄色い小さな鳥にヒット!リーダーは鳥を拾い上げて、自慢そうに見せてくれた。スゲー小さい。。。これでは焼鳥1本にもならないのでは。。。

その後も総出で狩りに当たったが、収穫はその鳥一匹だった。バオバブの木の下で火を起こし、鳥の羽を乱暴にむしってから、焚き火の上にポンと置いた。内臓は犬にあげる。結局、犬達はこのおこぼれを貰うためについてきただけだった。

リーダーが焼けた鳥を食べ始めた。殆ど食べる所はないが、もう一人の男にも分けてムシャムシャしてる。リーダーはムネ肉らしき部分を差し出してきた。食えって事だろう。火が通っているかは、かなり怪しかったが折角なので口に入れてみた。味は鶏とそんなに変わらなくて結構いける。男四人でこんな鳥ではおやつにもならない。この人達食っていけるのか?と心から心配になった。

村への帰路でリスを見つけて、緊張が走ったが、それもまんまと逃した。ホントに普段からやってるのだろうか?だが、村に着いてから、弓矢を教えてもらったが、彼らはかなり上手かった。20mは離れた丸太にスパスパ矢をぶち込んでいた。ひょっとして、彼らは動いている物を狙うのが苦手なだけかも知れない。でも、それは狩人としては、かなり致命的な気がした。




















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