目が覚めるとバスのなかは自分一人になっていた。見知らぬ汚いおじさんが肩を叩いて起こしてきた。
とりあえずバスからでるとタクシーの客引きが5人くらいいて、「ボーダー、ボーダー、ボーダー」と話しかけてくる。「ザミーン ウード?」と言うと、一人が120元と言った。「全然たけーよ!」と言って立ち去ろうとすると「70」という声がかかった。60から80元と聞いていたのでそのおじさんの車に乗ることにした。国境超えはジープだと聞いていたが、おっさんの車は中国版トゥクトゥクといった感じだ。
おっさんは15分くらい行ったローカルな宿の前でとまった。「ここにジープの運転手が泊ってる」といい、レセプションが入り口ソファで寝ているのに無視してその宿の中にどしどし入っていった。時計を見るとまだ朝5時半だった。2階の客室の扉を開けて中に入り、寝ていた女性を起こして、なにやら話をしている。話し終わると「これがジープの運転手だ。10時に国境があいたらザミン・ウードまでいく」と紹介した。人の迷惑をまったく顧みないすごいやつだ。
外は寒く、やることもないのでレセプションの椅子に座りひたすら待つ。9時半くらいにようやくジープの運転手のおばさんが降りてきた。10時半になったら出発するという。
時間になってもジープは出ず、結局11時に荷詰めを終えジープに乗り込んだ。ジープは運転席以外に座席がなく、目いっぱい荷物を積んでいた。乗客も他に一人だけで荷物の上に座った。
中国側の国境には大きな虹のオブジェが本物の虹のようなサイズで建っていた。それをくぐり、中国のイミグレを抜けるとすこし走ったところにモンゴルのイミグレがあった。
入国審査の列にはモンゴル人しか見当たらない。なぜか車のフロントガラスを抱えたモンゴル人のおじさんがいる。そのまま入国審査を受け、カウンターの脇をフロントガラスを抱えたまま通り過ぎていった。あれでなにも聞かれなかったのだろうか。
ジープはモンゴルに入国すると空き地で積荷を停まっていたトラックに移した。そしてウミン・ザードの駅前まで送ってくれた。心配していた電車のチケットはまだあり、2等寝台を買った。今夜は横になれそうだ。