今日もあいかわらず景色の変わらない悪路をひたすら進む。もはや車の轍も無視して、何もない草の上を走ってる。
バイサにどこで日本語を学んだか聞くと、7年間日本にいたと言う。千葉の銚子港で漁師をしてたらしい。どうりで言葉が男らしいわけだ。「おらがよー」とか「だっぺよー」と言うが千葉の人がホントにそういう方言かは不明だ。
バイサは離婚歴のある35歳だが、すごい腹が出ていて身長160くらいなのに95キロあった。
昨夜、酒を飲んでるときにモンゴル相撲の話になり、試しにアンディと相撲を取ってもらうとバイサは見た目からは想像できない速さで動き、アンディは宙に舞った。
車の左側にはアルタイ山脈が延々と続き、その手前に砂丘が山に沿って続いていた。
砂丘の近くには数キロおきにゲルのツーリストキャンプが見えた。もうこの辺でいいんじゃないというところを何度か過ぎて、車はようやく本日のゲルに着いた。ゲルの前には疲れた顔のラクダが何頭も繋がれていた。ラクダのコブはなぜか垂れていて、大丈夫かと心配になった。バイサは夕飯後に砂丘にいって日没を見ると言ったが、今すぐに出た方がよさそうだった。
調理を手伝ったが、案の定、砂丘に着いたときには日は落ちていた。それでも明るいうちに砂丘の向こう側を見ようとみんな駆け足で登り始めた。アンディは日没が見れないのですぐに引き返した。砂丘はかなり急で登りづらかったが、なんとか明るいうちに登りきった。振り返るとリサとパトリックが登っているのが遠くに見えた。
砂丘の頂上からは裏に広がる低い砂丘群が見えて、沈んだ太陽に照らされて西の空が赤く染まっていた。なかなか壮大な眺めだ。
裏側へと続く砂の稜線に座り、刻々と暗くなる景色をしばらく眺めた。