結局キンシャサではどこの国のビザも取らなかった。取れなかったのではなく、取らなかったのだ。実際キンシャサでは取ろうと思えば、カメルーンもガーナもガボンも取れたが、他国でとるのにくらべ値段が高すぎて、止めたのだ。その代わりブラザビルでガボンビザを確実に取るために日本大使館からレターを貰っておいた。
11時に日本大使館の領事担当の上田さんと約束したのだが、時間の読めないキンシャサの市内移動は、5キロと離れていないはずのヴィクトワール広場から大使館を二時間半という意味不明な所要時間を要して、午後の訪問になってしまった。
上田さんは三度目の訪問で大分打ち解けていて、遅れたにもかかわらず、全く嫌な顔を出さなかっただけでなく、宿が蚊が酷くて寝れないと言うと日本の蚊取り線香をわけてくれた。
アンゴラ入国以降、この3週間ほど日本人はおろか、外国人ツーリストに一切あってないので、この大使館に来ると日本人に会えてほっとする。この大使館はそんなに忙しくないようで、上田さんは早くコンゴ民主共和国から出ていってほしいというオーラを出しつつも、無駄話に毎回付き合ってくれていた。コンゴに入ってから、フランス語が出来ないので人とマトモな会話をした覚えがない。アンゴラはまだスペイン語でこちらの意思を伝えられたが、フランス語ではそうはいかない。そんなわけで大使館にくるとついつい余計な話をしてしまう。
明日はダウンタウンでカビラ大統領の続投に対する抗議集会が予定されているので、朝イチに船でブラザビルに行くようにと忠告された。前回選挙延期のときは暴動で100人以上の死者を出しているだけに、こういったイベントはかなり危険が高まる。
コンゴ民主共和国はモブツ、カビラ、カビラjr.とダメなリーダーが続いている。カビラ父の方は本気で国を良くしようと思ってたらしいが警護に暗殺され、引き継いだjr.にその気は全くない。アフリカで難しいのは、じゃーそいつが辞めて、別の人がやったら上手くいくかというと、そうはならないところだ。アフリカ人は権力の座につくと、利権に邁進してしまうとてもシンプルな人達だからだ。
帰りに港を確認して、中央市場を見て帰った。中央市場はアッパータウンとダウンタウンの間くらいにあるが、周りの道は水びたしで酷いことになっていた。市場に近づくと道の真ん中に延々とゴミがたまっていて、通行不能になっていた。さらにそのゴミの中も水路のように水が続いていて、遠くにトラックがハマって身動きが取れなくなっているのが見える。水は生活排水とゴミが混ざり、とんでもない異臭を発しているが、それでも道の両側には地べたで物を売る人で埋まっている。こんなに汚い町は見たことがない。そこを写真取ろうとカメラを出して構えると、四方八方から一斉に叫び声がした、これだけ素早くカメラを構えたのに、こんなにたくさんの人が一斉に叫ぶということは、歩いているときから、見られていたのだろう。ここには黒人以外はいないので、かなり目立ってしまう。カメラをしまったが、近くにいた3人くらいの若者が寄ってきて、服やバッグを掴んだ。「いや、写真は取らないよ」と言ってもエスカレートしていて、大声で怒って何かを言っている。近くの男がそいつらの腕を掴んで、行かせてやれ的な事を言って、なんとかその場を離れられた。市場の人達の目には全くウェルカム感はない。
更に進むと、ボロいストールが迷路を作っていて、人の密度がMAXまで上がった。大使館の上田さんが、現地にすむ外国人もここには絶対近寄らないと言うだけあり、買い物どころではないし、現地人もほぼ全員がバッグを前にかけて歩いているので、ヨッポド引ったくりが多いのだろう。また道路に出たが、やはり道は泥んこだ。道の広くなったところに野菜を売るひとや、洋服を売る人が、地面に座って品物を広げている。良く見るとなかなかの光景だが、それに感動してる暇はない。両足は既にあの真っ黒の泥まみれだ。キンシャサ中央市場はアフリカで一番汚い市場だろう。