2016/OCT/19 「死んだあとの世界」

7時に起きて、タクシーの運ちゃんに電話した。「昨日届けると言うから待ってたのに、なんで来なかったんだ?今日の朝のバスでオプウォに行くはずが、もうバスには間に合わないぞ!」と言うと「昨日は客が集まらなかったから、他のドライバーに頼んだ」と答えた。なんでそれを連絡してこないのかわからない。とりあえずそのドライバーの番号を教えてもらいかけると別の男がでて、「昨夜ウィントフックに着いた」と答えた。「バカか!なんで昨夜持ってこないんだ?オプウォへのバスを逃しただろ!今すぐ持ってこい!」と伝えると「今から向かう」とだけ言って切れた。

30分くらいすると、レセプションが呼びにきた。ドライバーが来たらしい。男に再度「なんで昨日持ってくると言って、持ってこないんだ?」と聞くと「昨日届けるとは聞いてなかった」と答えた。彼は元のドライバーから頼まれただけだと言う。「お前が昨夜持ってこないから、ここにもう1泊しなきゃならないだろ!ここの宿泊費どうするんだ?ポーチの送料は払わないぞ。頼んだ奴から取り立てろ」と言うと、男は「俺はなにも聞いてなかったんだ」と言って、下を向いてしまった。

周りの黒人たちが心配そうに見ている。不思議なことに黒人は黒人を庇う。これは南アでも見たが、他の黒人がけなされていると、周りの黒人は味方するのだ。彼らはブラックアフリカンという、自分の国とは違ったもう一つのナショナリティーを持っていて、黒人同士、国が違えど同じ民族のような感覚があるのだろう。見た目について話すと差別になるが、人は見た目の似た者に親近感を抱くものだ。旅人の集まる安宿でも白人はやはり、まず白人に話しかけるのと同じだ。

ドライバーは黙って、うつ向いたままなので、「半額の50だけだ」と言ってお金を手渡した。そのあと、直ぐにテントをたたみ、荷物を纏めて、レセプションにチェックアウトと告げた。これ以上ウィントフックにいるのはストレスになるので、オプウォにたどり着けなくても、前に進もうと思った。

通りでタクシーを捕まえ、オプウォ行きのミニバス乗り場へ向かった。だが、オプウォ行きはやはりなく、別のミニバス乗り場で北部へ向かうミニバスを探すことにした。タクシーの運ちゃんは乗り場にいる客引きは皆嘘つきなので、電話で知り合いに予め人の集まってるミニバスを教えてもらうと言った。そして乗り場から離れた場所で車を止め、一人の男に託された。運ちゃんがその男から金を受け取るのがチラッと見えた。客は売れるのだ。「あと、どれくらいで出発なの?」と聞くと「15分だ」という。絶対それは無いが、他のミニバスはもっと人が少なく選択肢はない。「どーせ、15分では出ないんだから無理に嘘つくな。あと何人なんだ?」と聞くと今度は「たったの四人だ」と答えた。

客引き達はタクシーが通る度に、それを囲み、「あと一人だ!はやく乗れ」と嘘っぱちの勧誘を繰り返している。外はひどい暑さで客引きも楽ではないのは確かだ。

結局一時間ほど経って、ミニバスは出発した。途中オジワロンゴという所で止まり、そこでオプウォ行きのミニバスがあるか聞いてみた。この町は分岐でここから西に回った方が、オプウォは近い。このミニバスだとこのままオシャカティという町まで北上するので遠回りだ。

ガソリンスタンドに客引きらしき男がいて、聞くとオプウォ行きのバスもあるという。見に行くと、トップレスのヒンバ族が七人ほど座り込んでいる。近くの人に聞くと、バスはここに向かっている途中で、このヒンバ族の人たちも待っているという。昨日から。座り込んでいるヒンバ族は食料もたくさんもっていて、長期戦の構えだ。この感じだと、今日バスが来るかも怪しい。ミニバスの運ちゃんに「このままオシャカティまで行くよ」と言い、ミニバスに戻った。

ガソリンスタンドに戻ると、車はパンクしたようで修理をしていて、皆外に出ていた。ミニバスに乗っていた男が「何処から来たんだ?」と聞いてきて「日本だ」と答えると「日本からフライトはいくらだ?」と聞いてきた。この質問はよくある質問で、何故か皆日本からのフライトの値段を知りたがる。


「中国から陸路と船でエジプトまで行って、そこから降りてきたから飛行機は乗ってないよ」と言うと、「イスラエルも行ったのか?キリストの生まれた場所は行ったか?墓は?」と急にテンションが上がってきた。それを聞いた周りの人も集まってきた。どうやら皆熱心なキリスト教らしい。「キリストの生まれた場所も墓も行ったよ」と言うと、「でもキリストは天に召されたから墓にはいないはずだ」といった。「じゃー聞くなよ」と思ったが声には出さなかった。「お前はキリストを信じるか?」と聞くので「宗教は全て信じないんだよ」と答えると「じゃー死んだあと、お前はどこに行くんだ?天国と地獄があると思わないのか?」と興奮気味に聞いてきた。「それは分からないけど、それを確認する方法もないから考える必要はないんじゃない?」と言うと、周りの人達はどっと笑った。男も一瞬ハッとした顔をしたが、なぜかそのあと握手をしてきた。「死んだ後の事でなく、いつオシャカティに着くか考えたほうがいいよ」と言うと男の目の色が変わった。男の宗教観に変化があったかどうかわからない。








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