2016/SEP/13 「アフリカの壁」

アフリカ縦断の旅は南アフリカに着いた時点で終焉を迎えた。スワジランドやレソトはまだ行ってないが、アフリカ最南端の国は南アフリカだ。中国から飛行機を使わずに南アフリカまでやって来たと考えると、なかなかの旅だったなーと浸るには十分な移動距離だ。

ここから先述の2か国とナミビアへ行くと後は何処へ行こうかと言う話になる。上海からアフリカもエジプトから南アフリカまでの縦断も終わり、そろそろ帰国の時なのかもしれない。これまでも道中、ケープタウンに着いたら帰るかなーと考えていた。

アフリカには西アフリカというコアな旅人の好む地域があるが、ここから西アフリカに陸路で行くには中部アフリカを通る必要があり、そこには大きな壁があった。それも2つも。一つはアンゴラでもう一つはコンゴ民主共和国だ。この2か国はVISAを取るのが恐ろしく難しく、そのためアフリカ大陸をを時計回りで1周したという人の話は聞いたことがないし、どんなにネットで探しても出てこなかった。最近わかったことだが、西アフリカはモロッコから南下してくれば、南アまで陸路で来られるらしい。そこから北上するとエチオピアVISAが陸路では取れないというのは有名だが、これは頑張れば取れたという人を2人ほど知っているので可能だ。勿論色々調べて、運もなくてはダメだろうが。

モロッコから下りてくるとトーゴでコンゴ民主VISA、キンシャサでアンゴラVISAをとれるらしい。コンゴ民主のVISAに関して言えば、トーゴの警察に賄賂を払い住民票を作ってもらい、トーゴに住んでいるということで発行してもらえるらしい。もし、アフリカをぐるっと一周したいなら、モロッコから南アまで南下して、それからエジプトまで北上すれば陸路ですべて行くことができる。なんならスペインから船でモロッコへ入り、エジプトから船でヨルダンへ抜ければ全く飛行機は不要だ。1年半から2年もあれば、陸路でアフリカ一周できるだろう。これはかなり夢のある旅だ。

逆回りだとそうはいかない。アンゴラ、コンゴの壁が立ち塞がる。この2か国は原則、居住国でしかVISAが取れない決まりがある。そうは言ってもアフリカなので、ザンビアで1度コンゴ大使館へ聞きに行ったことがあるが、その時は「コンゴにはツーリストVISAは存在しない」と門前払いを受けた。賄賂を渡そうにも、中までたどり着くことすら出来なかった。

インド洋の島巡りからヨハネスに戻り、首都プレトリアが目と鼻の先ということもあり、ダメもとでアンゴラ、コンゴのVISAを調べてみることにした。今度は日本大使館のレターを貰い、それをちらつかせて様子を見ることから始めることにした。

プレトリアには通称大使館通りと呼ばれる大通りがあり、世界中の大使館が並んでいる。(因に日本大使館はここではなく、酷くアクセスの悪い場所にある)

コンゴ大使館へ入って、「ビザの申請をしたいんだけど」と聞くと「コンゴの何処へいきたいんだ?」と言うので「キンシャサ」と答えると「それはコンゴ民主だ。ここはコンゴブラザビルだよ」と教えてくれた。紛らわしいがコンゴは2つある。コンゴ民主共和国(旧ザイール)とコンゴ共和国。前者の首都がキンシャサで、後者はブラザビルが首都のため、コンゴブラザビルとかコンゴキンシャサと呼んだりする。実に紛らわしい。

場所を教えてもらって、少し離れたコンゴ民主の大使館へ行くと入り口で警備に止められた。「支払いはしたのか?」よく意味が分からなかったが、どうやらVISA代金のことで、銀行振込をしてきたか?と聞いていると分かった。「いや、まず申請出来るか知りたいんだ」と言うと「現地からの招待状は?南アに住んでるのか?」と聞かれたが「長い旅行中で日本でVISAを取ってこれなかった」と言うと中にいれてくれた。

カウンターでビザがほしいと言うと、「何故日本で取ってこなかった?」と言うので「長い旅行中で元々西アフリカへ行く予定はなかった」と言って、日本大使館からのレターを見せると無愛想に申請書をくれた。さらに、「日本を出てからの全ての旅程と今後の旅程、最終目的地を書いて持ってこい。あとなんでコンゴへ行きたいかも文章にしてもってこい。全ての書類を見て判断する」と言った。ザンビアのコンゴ大使館とは全く対応が違う。雰囲気は決してよくないが、なんか可能性を感じる対応だ。お礼を言って大使館を後にした。

続いてアンゴラの大使館に行ってみる。アンゴラは入り口でコーラをがぶ飲みしてる太った女性警備員に止められ「ビザの申請はオンラインのみだ」と言って、掛け合ってくれなかった。取り合えず、教えてもらったウェブサイトでやってみるしかない。

宿に帰ってトライしたが、現地の保証人の欄があり、それを埋めないと先に進めない。また住所も南アでなければ申請が出来ない。つまり、諦めろということだろう。楽な門前払いの方法を考えたものだ。だがここで諦めたらただの旅行好きだ。

コンゴのVISA申請書を書いて、モチベーションレター、旅程表も作った。そのなかにコンゴで何をするか、何処に泊まるか等を書いた。BOOKING.COMでキャンセル可能な宿を予約して印刷してからキャンセルした。念のためずいぶん前にダウンロードした残高証明の日付をPhotoShopで加工したものと、プレトリアの宿が、携帯のSIMを買うときに作ってくれた滞在証明も一緒に出すことにした。(南アではそれがないとSIMが買えない)

そして翌日、コンゴ民主の大使館へ。宿からは二キロくらいあるが、昨日、日本大使館から徒歩で5.5キロも歩いて帰ったのに比べるとたいした距離ではない。窓口で「昨日言われた書類を持ってきたよ」と言うと、「あー。彼女は今日休みだから、明日確認して連絡するわよ」とのことだった。今日持ってこいと言っておいて、今日いないところがアフリカだ。それでも書類を受け取ってくれただけでも大きな前進に思えた。


その勢いで昨日門前払いにあったアンゴラ大使館へ。入口の太ったおばちゃんに「オンラインやってみたけど、現地の保証人と南アの居住証明がないから先に進めないよ。旅行者なんだからあるわけないでしょ」と言うと、「中で聞いてみろ」と大使館の中へ入れてくれた。チャンスとばかりにガラス越しに大使館員に長い旅の途中で、元々西アフリカへ行くつもりはなかったので日本でVISAを取ってこなかったこと、現地に知り合いはいないから招待状はないこと、南アには住んでないことを話した。そして日本大使館からのレターを見せて、「これは日本大使館からの手紙で、ここに彼にVISAをあげてって書いてあるよね」と手渡した。すこしの間、手紙を見てから大使館員は「この手紙にはアンゴラで何をするか、何処に泊まるか、旅程がないじゃない」と言った。「じゃーそういうレターを作るよ」と言うと「オンライン申請で、現地からの招待状のかわりに大使館のレターをアップロードして、南アの居住証明の代わりにそのレターをアップロードしたらいい。現地の保証人の欄には日本大使館の住所を入れたらいい」と教えてくれた。なるほど、確かにこれで空欄は無くなるので先のページに進めるようになりそうだ。

なんとかアンゴラも可能性が見えてきた。とてつもなく高く見えた西アフリカへの壁は、今は、もうすこしで飛び越えられそうな高さだ。



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