スワコプムンドからレンタカーで北上するために人集めを試みたがうまくいかないので、ミニバスでオプウォに行くことにした。テントをたたんで、荷物を纏めた。オプウォに行くには一度ウィントフックに戻らないといけない。
宿にいたスワコプムンド在住の白人の男に聞くとシャトルは午後の2時だという。「シャトルではなく、人が集まったら出発するミニバスはないのか?」と聞くと「バンブータクシーか。あいつらは信用できない。よく事故るぞ」「でも、それでウィントフックからきたんだよ」と言うと、「通りでタクシーにウィントフックに行きたいと言えば、連れていってくれるよ」と教えてくれた。
タクシーは少し離れたガソリンスタンドに向かい、そこに近づくと停車する前に男たちが一気に寄ってきた。「ウィントフック!ウィントフック!ウィントフック!」スゴい勢いだ。ミニバスらしきものはなく、普通のセダンとワゴンしかない。「どれだ?」と運ちゃんに聞くとワゴンを指した。ウィントフックからはミニバスだったが、スワコプムンドからは完全にシェアタクシーだ。それでも値段は140NAD(1,036円)と変わらないので乗ることにした。
客引きの男達は、車の数よりもはるかに多く、彼らは客をつかまえて運ちゃんからお金を貰っているようだ。ワゴンのタクシーを一杯にして20NAD(148円)。セダンなら10NAD(74円)。いったい何台のタクシーがスワコプムンドから出発するのか分からないが、客引き一人辺り1日50NAD(370円)も稼ぎはないだろう。それでも仕事のない男達は町を徘徊していたり、ビーチで会った釣り人のようになる。あの釣り人たちは本気で夕飯の食材のために釣りをしている。よくアフリカの動物の数が減ったという話を聞くが、開発により動物の生活圏が圧迫されるといった理由以外にも、単純に食べるために狩られているというのが大きい。大抵の動くものは食べるし、お金を払う必要はないので現金収入のない人に取って動物=食べ物だ。ナミビアは金やダイヤモンド鉱山くらいしか産業はなく、農作物は南アからの輸入に頼るしかない有様だ。そのせいで物価は、アフリカ一の経済の南アに比べても更に高いくらいだ。資本のある白人達が、まず見込みのありそうな仕事を始めてしまっていて、お金のない後発の黒人達は、その下で働く以外にないのは南アや他の南部アフリカと変わらない。そのせいで首都ウィントフックの治安は周辺国に比べ悪くなってしまった。
シェアタクシーは6人集まると出発した。猛スピードで走る。日本なら車検に通ることはない車体でシートベルトも壊れている。スワコプムンドを出ると一気に気温は上がり、とても上着をきていられなくなった。休憩で止まると、皆こぞって商店でアイスとジャーキーを買った。このジャーキーは色々な獣の肉のものがあり、ナミビアの名産品になっている。結局美味しいのはビーフなのだが。
タクシーは午後3時くらいにウィントフックに着き、カードボードボックスにまた戻った。1泊して、明日の朝オプウォに行くので今度はドミにした。ベッドで荷物を広げると、薬とスパイス、スノーピークのチタンコップ、ヴィクトリノックスのナイフを入れていた赤いポーチをスワコプムンドの宿のキッチンに忘れてきたことに気がついた。
スワコプムンドの宿でFBでつながった旅人にメッセージを送って、ポーチが宿にあるか訊ねると、まだ宿にあると返ってきた。レセプションの携帯の番号を教えてもらい電話をすると、レセプションの肥った黒人のおばさんは「シャトルバスの運転手に明日の朝渡すから、午後にはウィントフックに届くはずだ」と言った。スワコプムンドまで戻らなければならないと思ったが、その必要はなさそうで助かった。だが、これはこのあと3日間、いかにナミビア人が、責任感がなく、他人のことは気にかけないかを体験する始まりだった。
翌日、ネットで中部アフリカを調べたりして、ポーチを待っていたが、いっこうにポーチはやってこない。スワコプムンドの宿のレセプションに電話をするが出ない。しばらくして、かけ直すが一向にでない。翌日、また電話をすると、別の人間が出て、「レセプションと話したいので、折り返してくれ」と言うと「分かった」と言うが、いっこうに折り返してこない。そのあとも何度もかけ直すが、彼女が電話に出たのはすでに夜中だった。彼女は「ドライバーに頼んだから、明日にはそっちに届くはずだ」と言った。「ドライバーの連絡先を教えてくれ」と頼むと「分かった。かけ直す」と言い電話を切り、かけ直してくるのかと思ったら、それ以降全く繋がらなくなった。
その翌日、午後2時を過ぎても来ないので、再度電話をするが繋がらない。ネットで宿のホームページを探し、別の番号にかけると他の女性が出た。アクセントから白人のようだ。説明をすると「レセプションがその話をしてたのは知ってる」と言う。念のためにポーチはすでにドライバーに渡したのか聞くと「まだ宿にある」と答えた。「何故そういう説明を最初からしないのか、時間がかかるなら、直ぐに取りに戻ることもできたのに。もうここで3日も無駄にしたよ」と言うと、「それは申し訳なかった」と謝った。ここは黒人と少し違うとこだ。黒人なら謝らない。だが、その女性はこっちで荷物の引き取りと運送を手配しろと言ってきた。もう、私達はなにもやらないと。だったら最初から出来るっていうなと怒鳴りそうになったが、堪えて、スワコプムンドからウィントフックのルートを走ってるシャトルの会社を三社教えてもらった。
全ての会社に電話をしたが、やはりもう、スワコプムンドを出てしまったと言い、今日取り戻すのは無理な感じになってきた。信じられないことに、たった4,5時間の所に小さな荷物を届けるのに3日待っても届かないことになった。最初のレセプションがしっかり、確認してシャトルを手配すれば、多分二日前に届いたし、そのあと彼女が、ウソを決め込んで、電話を無視しなければ、その翌日には届いたはずだ。そして、この電話の白人も申し訳ないとは言うものの完全に責任放棄。何もしないという。これで、届くのは四日目以降だ。ナミビア人マジで使えない。
再度、白人女性に電話をして、他に方法がないか聞くと、「スタッフをウィントフック行きのタクシーが集まるガソリンスタンドに送って、ドライバーに頼んでみる」と言ってくれた。そのあと彼女は折り返してきて、ポーチを渡したドライバーの電話番号を教えてくれた。やはり、この国も白人しか頼れない。黒人達は基本的に面倒な事はやらないし、自分たちに楽な方法で、それがそのあとどうなろうが気にしない。平気でウソをつくし、都合が悪くなると電話には出ない。そして、お金お金言うが、お金に対する責任は一切考えない。この黒人のメンタリティが、多くの人がアフリカの将来に対して悲観的になる理由だろう。頭を使わないし、努力もしない。でも自分の欲求と不満ばかり口にする。全員ではないが、過半数はそうだろう。
アフリカが西欧文化に接してからの年月を考えれば、彼らが欧米人と同じような車や洋服、生活を手にいれたのに、精神手にはサバンナで暮らしていたころからそうかわってないのは、人としての発展があまりに小さい。この黒人のメンタリティをかれこれ10ヶ月も見てくると、先進国の援助に対しても止めた方がいいと思えてくる。彼らに物を与えることは決して彼らのためにはならず、教育と医療のみの援助にして、あとは自分達でやらせた方がきっといい発展を遂げるだろう。それでアフリカ人が、いまだに全てブッシュマンだったとしても、それがアフリカということだ。発展は本人たちの力で行う必要がある。