2016/DEC/24 「チャド入国」

5時半に宿を出て、バス会社へ向かった。まだ辺りは真っ暗で、灯りも少なく迷いそうだ。昨日のうちにチケットを買っておいたので、それをカウンターで見せて、座席を確保してもらう。ターミナルにはたくさんの人がいて、相変わらず人々は大量の荷物と一緒で、そこらじゅう荷物だらけだ。

外でチャイを飲んで、携帯をすこしだけ充電した。結局宿は一晩中電気が戻ることはなく、一切充電出来なかったので、昨日の朝から携帯は切れたままだった。ガルアは電気事情が悪すぎる。

カメルーンの中部以南では、コーヒーや紅茶に後から砂糖を混ぜていたが、この辺りでは既に入っているので、ブラックという選択肢がない。中央アフリカもデフォルトで大量の砂糖が入っていた。この辺りから北へ進めばもっとイスラム色が強くなり、お茶に入れる砂糖も増えてくるかもしれない。スーダンのコーヒーを思い出す。

バスは7時半に出発。割りと早めにバスに乗り込んだが、何故か一番先頭の席にいたおじさんが、ここに座れと言うので、さんざん空いてる席があったのに、3人掛けシートに二人の大きなおじさんに挟まれて座ることになった。しかも、ここに座れと言ったおじさんは英語が出来ずただ狭いだけだ。

3時過ぎにヤーグアという、国境の町に着いた。そこからはバイタクで10キロほど行ったところに川があり、その川がチャドとの国境だ。

川際には警察のための掘っ立て小屋があり、警察のチェック、税関、イミグレと三回にわたりワイロ請求をうける。これらはカメルーン讚美で問題なく切り抜くことができ、最後は笑顔でボン ボヤージュと言って見送ってくれたりする。カメルーン警察はどこか憎めない。

1000CFA200円)を払い、ピローグ(手漕ぎ船)で川を渡る。タンザニア、モザンビーク国境を思い出させるような光景だ。こうやって手漕ぎ船で国境を越えるのは情緒があっていい。

ところが、チャド側のイミグレは全く情緒がなく、川際の隣接して4つもある無意味な警察の小屋へお金をたかられに顔を出さなければならない。それぞれ5mと離れていない小屋は、一つ終わると次の小屋へ行けと言われ、そこでまた金をたかられる。最初の警察のチェックではまず6000CFA1,200円)と言われ、払わないと言うと、「じゃーカメルーンに戻れ」と突っぱねてきた。ものすごく強気なので説得にはめちゃくちゃ時間がかかる。しかも、4回にわたる金をむしり取ることしかしない謎のポリスチェックを全て終えると、実はイミグレはここにはなく、近くのボンゴールの町にあるという。

このワイロ攻撃をしのぐのに着岸してから一時間以上かかった。最近のワイロ攻撃をかわす言い訳は、ビザを見せて、「ほらこんなに高いビザ代を払ったんだよ。アフリカ人がIDのみで、国境越えるのとは違うんだよ。大使館でもビザ代を払えば、国境で払わなくていいと言われたよ」と説明するのと、今までにもらった各国の日本大使館の領事の名刺をちらつかせる。大事なのは現地人が皆払っているが、彼らはビザ無しで国境を越えているからだと違いを強調すること。これは周りに金を払っている現地人がいたとしても、払わないですむ大義名分ができるので、入国審査官もじゃーいいよと言いやすい。これでダメならこの国はとても人が良いと聞いてきたとか、本当によい国だと聞いてきたと言うと、最終的にはボン ボヤージュということになる。

国境からはバイタクでボンゴールの町へ行き、そこの警察署で入国スタンプをもらった。
これでようやく入国完了。あとで数えるとチャドが130ヶ国目だった。そして今日はクリスマスイブ。なんだかめでたい気分だ。

時間を見ると既に15時を過ぎていて、ンジャメナ行きのバスはないようだった。もう少し探せばあったのかもしれないが、ンジャメナに着くのが遅くなり、宿探しに難航しそうなので、今夜はこのボンゴールに泊まることにした。

バイタクにそのまま安宿まで連れていってもらい、2軒目で5000CFA1,000円)の部屋が見つかり決めた。名前はオーベルジュ ホライゾン。中部アフリカでの宿探しは5000CFAというのを目安にしていた。

ボンゴールは砂ぼこりが酷く、バックパックも服も砂だらけだ。乾燥していて喉もカラカラなので、早速ビールを探しに出た。町は街道のみ鋪装されていて、あとは未舗装だ。未舗装の道は所々深い砂だったする。殆どの家は日干し煉瓦の壁で囲まれて、その壁が路地を作っていて、いわゆる砂漠気候の町の造りだ。

日干し煉瓦の壁の一つの鉄扉の前にバイクが何台も留まっている建物があり、中を覗くと、中庭のような空間に15人程度の客がいて、ビールを飲んでいる。当たりだ。
ビールは750CFA。カメルーンより少し高い。よく冷えたビールをくれと頼むと、瓶の周りに氷の着いたCASTER(中部アフリカでよく見るビールの一つ)が出てきた。こんな冷えたビールはキンシャサ以来だ。

二人組のおじさんの隣に座り、グラスについで喉に流し込んだ。素晴らしい冷え具合だ。これだけ乾燥した国で飲む冷えたビールはいつもの2倍旨い。隣を見るとおじさん達が、じっと見ているので乾杯の仕草をすると、返してくれた。よく見ると、隣のおじさんは見たことのないビールを飲んでいて、聞くとチャドビールだという。チャドはイスラムのイメージが強く、飲み屋さえ無いのかと心配していたが、なんと自国限定のビールまであった。実はそんなに厳しくないのかも知れない。

CASTERを飲み終え、チャド限定ビールのGALAを頼んでみた。今度もよく冷えたものが出てきたが、味は微妙だった。不味くはないが、これ迄のメジャーなビールに比べるといまひとつな感じだ。

だが、この2本目を開けると、3本目は隣のおじさん達から届いた。チャド人はなかなかいい人たちだ。イスラム教徒には訪問者を歓待する傾向があり、良くしてもらった経験がおおい。何時から飲んでいるのか分からないおじさんたちのテーブルはビール瓶で一杯だ。見知らぬ国で一人、人からの親切はとても暖かく感じる。こんなクリスマスイブも悪くない。














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