朝遅めに起きると、子供たちもマリオンも出掛けてしまっていた。コーヒーをいれてキッチンにある残りもので朝食にした。この家はしっかりした朝食を作る習慣はなく、フランスパンにジャムやらヌテラやら好きなものを塗り、コーヒーや紅茶やら好きなものをいれて、勝手にとる感じだ。始めは戸惑ったが、慣れれば気軽なものだ。
朝食を食べ、洗濯をして、日本大使館から借りた本`クジラと日本人' を読み終えた。この本はなかなか面白かった。他にも`エビと日本人'という本が出ているようで気になったが、これは大使館にはなかった。大使館からは他にも`フランスの外交力'、 `アフリカ大陸探険史' 、`アフリカの大疑問'を借りて読んだ。`フランスの外交力'は西アフリカを旅するなら良い事前知識になるだろう。東アフリカもそうだったが、やはり単に旅するだけでは分からないことも多い。色々な本を読んで実際に行ったときの感覚と擦り合わせるというのがその国をよく知る方法だと思う。`アフリカ大陸探険史'も18世紀からのアフリカ探検の歴史がわかり面白かった。中でも多くの探検家にとってナイル川の水源を見つけるというのが大きな目的だったことが興味深かった。リビングストンもスタンレーも最大の関心はナイルの水源だった。
ナイル川の水源については2世紀頃、既にプトレマイオスが、「雪を頂く月の山脈のふもとにある2つの湖」と記述している。彼の作ったアフリカ地図は北部については詳細だったがサハラ以南は実際とは大きく異なっていた。この頃にサハラ以南を旅した人などおらず、当然と言えば当然だが、驚くべきことは、この月の山脈というのは実在し、その近くにはナイル川の水源であるヴィクトリア湖があるということだ。実際の水源地はブルンジまで遡るが、ナイルはこの湖から流れ出ている。
そして、プトレマイオスの言う`月の山脈'というのは、実は半年前にポーター8人、ガイド2人、護衛2人を引き連れて登ったルウェンゾリ国立公園のスタンレー山だった。赤道に一番近い氷河を持つ神秘の山だ。これを知ったときは、一人感慨にふけった。
昼過ぎにマリオンと子供達が帰ってきた。マリオンは今日は演劇のイベントを家でやると話した。フランスのNGOが現地人の劇団をサポートするために、大きな家に住む駐在員等の家の庭で月に一度、演劇イベントを開いていた。今日はマリオンの家でやるということらしい。この家の庭にはちょうどいい半外部の小屋があった。
夕方に劇団の人達がやってきて、照明やスピーカーのセッティングを始めた。役者もリハーサルをしている。
マリオンはソファを庭に出したり、客席に蚊取り線香や蝋燭を置いたりと準備を始めたので手伝った。テーブルには飲み物やスナックが用意された。前日に使用人が調理していたのはこの演劇用だった。この家は普段あまりキレイにしていないが、準備が終わるとなかなかそれらしくなった。子供達は通りから家までのサインを段ボールで作った。それには`THEATRE SOUS-MANGVIER'と書かれていた。マリオンが`マンゴーの木の下'という意味だと教えてくれた。彼らは劇場など持たず、こういった人の家の庭で活動をするのでその名前がついたという。いい名前だ。
子供を含めると30人くらいは集まった。辺りは暗くなり、蝋燭の灯りと舞台の照明でとてもドラマチックだ。
NGOの代表の挨拶があり、劇が始まった。全てフランス語で内容は分からなかったが、役者との距離が近く、臨場感があり良かった。演技も思っていたより全然本格的だった。
劇が終わると役者やスタッフも含めて立食パーティーになった。この家の大きな庭と軒下はこういったイベントには最適だ。知り合いやはじめて会う人、劇団の人が皆楽しそうに話している。こういった大きな庭のある家を使って、現地人の活動をサポートするイベントを企画するというのは、とてもいいなーと思った。いかにもフランス人らしい、文化的な試みだ。日本人も農業やインフラだけでなく、こういった事が出来るようになればなーとすこし羨ましかった。
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