2017/APR/11 「トゥプカル山頂」

朝の5時過ぎに周りの音で起きると、部屋の客の半数は既に出発していた。軽く朝食を食べて、出発準備をした。

外に出るとたくさんの人がアイゼンを取り付けている。大きなグループもいるが、彼らは準備やらガイドからの説明やらで、歩き出すのにやたらと時間を要している。アイゼンをつけ終わると、そういった観光客を横目に一人で歩き始めることにした。本当はガイドを雇った登山客の後についていこうと思っていたが、昨夜、ガイド達についてくるなら金払えと言われて、一人で行くことにした。この山小屋は快適だが、ガイドの客引きが酷く、彼らは一人で行くからいいと断ると悪態をついたり、他のガイドの後をつけてはダメだと感じが悪かった。人一人が通れる道を100人以上の登山客が登るのに誰かの後をつけないなど不可能だ。

雪は夜の間に固まり、アイゼンが効いて登りやすい。かなり急斜面だがジグザグに登る道が出来ていて、先行している人のヘッドライトの明かりがポツポツと見える。なんとかなりそうだ。

登りはじめは急登で汗をかいたが、少し登るとすぐに寒くなってきた。念のために持ってきたユニクロのウルトラライトダウンを、ジッパーの壊れたゴアのジャケットの中に着込んだ。このダウンの羽毛は長旅でヘタってしまい保温効果はあまり期待できない。サングラスはフレームが壊れてセロテープで止めてあるし、Suuntoの腕時計も電池残量が危うい。底の剥がれたブーツといい2年におよぶ旅で装備は限界に近づいていた。

2時間ちょっと登ると稜線に出た。ちょうど太陽が稜線までとどきはじめ、日に当たると冷えた体が暖まった。宿で隣に寝ていたデンマーク人の大学生の一人が座って休んでいた。たしか、もう一人の学生とガイドと登っていたはずだ。聞くと高山病で吐き気が酷く、ここで一人待機しているという。持っていたリンゴとデイツをあげると物凄く感謝された。1キロ150円と100円で買ったリンゴとデイツがここではそれ以上の価値を得たようだ。

一休みしてから、稜線を登りだした。景色は素晴らしく、何度も振り返って周りを見渡した。そうこうしてるうちに太陽が出て、暖かくとても快適な登りになった。そして40分ほどでトゥプカル山頂に到達した。先に着いた登山客が写真を取ったり、座って休んだりしている。同じ部屋に泊まっていたイギリス人がこっちに気がついて、祝福しあった。

天気は快晴で、山頂からの景色は文句のつけようがなかった。マラケシュから12日でこんな景色の所に来られるのは本当に驚きだ。以前モロッコに来たときにはこんな場所があったことすら知らなかった。

驚くほど風の無い北アフリカの最高峰の頂は登り始めた太陽に照らされ、この旅最後になるであろう山行を祝福しているようだった。
















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