2017/APR/3 「ラクダ肉」

ムーハマートは飼っているヤギの世話で朝早くから動いている。8時くらいにヤギのミルクを持って戻ってきた。ムーハマートはネスカフェのサチェットをくれ、お湯を沸かしてくれた。折角なのでフレッシュなヤギのミルクでヤギラテを作ったが、けして美味しいものではなかった。

暑くなるので早く出たかったが、ムーハマートの諸々の雑用があり出発したのは9時だった。砂漠の中を進んでいくと、後ろからムーハマートのヤギたちがついてくる。彼は独り暮らしなので他にヤギの世話をする人はいない。

昨日とは違うルートで平らな場所を進み、2時間くらいでナツメヤシの木がたくさん生えている場所についた。ムーハマートは「オアシスだ」と言った。だがこのオアシスというのは砂漠の中に湖があるわけではなく、井戸を掘って水が出て、そこに人が住み着いた場所のことだ。ナツメヤシも井戸水を使って育てたもので、そこから取れるデイツで現金収入を得ている。裏には村があり、商店もあった。村のなかも完全に砂でよくこんな所にすんでいるなーと考えてしまう。

この辺りにはたくさんのオアシスがあり、少し先にも似たような村が見えるし、逆方向にもある。ムーハマートは村人と話をして、お茶をご馳走になるとすぐに村を出た。

2kmほど歩いた先の砂丘の窪地にあるオアシスの小屋で休憩にした。今日はここで夕方まで動かないのだろう。この砂漠ツアーはこの昼間の休憩のせいで密度がかなり薄い。朝と夕方歩いて、昼は5時間もゴロゴロするだけだ。しかもここからシンゲッティはもう見える距離なのに。

ムーハマートはまたお茶をいれだし、2セットほど繰り返した。昨夜からは甘いのが嫌なのを理解して、まずこっちのグラスに砂糖なしで注ぎ、それからポットに砂糖を入れて自分の分を作るように工夫した。だが、ポットに砂糖をいれるので、2杯目、3杯目はポットの茶葉に染みこんだ砂糖で十分に甘い。

南に見えるオアシスの裏にシンゲッティのグランモスクと似たようなミナレットを持つモスクが見えた。ムーハマートは逆方向なのでだいぶ渋ったが、行ってくれることになった。モスクには誰もいなく、ミナレットの扉をムーハマートが開けてくれて、登ることができた。そこからの眺めは素晴らしく、風が気持ちよかった。

そこからシンゲッティまではラクダに乗って帰った。ブルキナファソで会った女の子はシンゲッティからウワダンまで120km歩いたと言っていたが、毎日5時間の昼休憩があったのだろうか。正直、もはや砂丘には入りたくなくなっていた。

宿に戻るとシェクが迎えてくれた。やはり誰もツーリストはいないようだ。シェクは明日のアタールまでのタクシーを手配しておいてくれた。ラクダ肉を食べたいと言うと、ちょうど昨日買ったのがあると、冷蔵庫から出してきた。1000MROで譲ると言うので500にまけてもらい調理もしてもらった。

飯が終わるとシェクは何やら奥からジップロップに入ったものを出してきて、一年くらい前の日本人ツーリストが置いていったものだと教えてくれた。手紙が添えられていて「アイロントレインに乗るために防塵対策を用意してきたが、乗らないことになったので準備したものをここに置いていきます」と書いてあった。マスク、手袋、ビニールシート、カッパの上下が入っていた。シェクは「これはお前のためにとっておいたものだ」と言って渡してきた。そんなはずは絶対ないのだが、シェクにお礼を言って受け取った。とにした。噂に聞く、アイロントレインは鉄鉱石の粉で全身真っ黒になるらしい。この親切な旅人の置き土産によってアイロントレイン対策は整った。














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