2016/DEC/12 「中央アフリカビザとワイロ」

フンバンへバイクで行っていたデニスが戻って来たのは昨夜12時過ぎだった。寝ているとバイクの音がして分かった。

今日は朝から中央アフリカ大使館へ行き何とかその場でビザを発給してもらえないか頼むことになっていた。もし、ビザがその場で貰えれば、今日のうちに中央アフリカとの国境の町、ガロアブライまで行き、明日の朝、国境を越えた所からUNの護衛隊と移動ができる。ダメなら次に護衛隊の出る土曜まで待ちぼうけだ。

マリオンは娘たちに朝食を食べさせていた。7時過ぎに子供達を学校へ送り、そのまま仕事へ行くというので、大使館の近くまで送ってもらうことになった。家を出る直前にはデニスも起きてきたので、念のためお別れを告げた。デニスは今日出るのか?と驚いていたが、この家には既に10日もいる。「何も出来なかったが、もし日本に来ることがあるなら教えてくれ、必ずお礼をするよ」と伝えた。

マリオンの車は子供達を学校で降ろすと、朝の渋滞のなかバストスへ向かった。渋滞が酷いのでバストス手前のランダーバートで降りて歩くことにした。マリオンにもお礼を言って、ビザが取れたかどうか後でメールで知らせると言って別れた。

大使館には8時半についた。敷地にはいると、金曜日に来たときにいた男達がいて、挨拶してきた。レセプションは全く英語が通じなかったが、その男達が通訳してくれ、今日、どうしてもガロアブライに向かいたい事も説明してくれた。

レセプションは「75,000CFAだ」とだけ言った。なんか聞いてたより高いぞと思ったら、壁に値段表が貼ってあり、ビザ50,000CFA、エクスプレス+15,000CFA、申請処理費+5000CFAとなっている。足しても70,000のはずだ。この申請処理費というのもかなりいかがわしいが、それでもさらに5000ほど上乗せしてることになる。

レセプションに「間違ってるでしょ?」と言うと、建物の中の部屋に通された。そこで書類まみれの机に座った男が、英語で挨拶をして来た。彼が領事担当に違いない。「明日の朝、国境からのUN護衛隊と移動を共にしたいので、直ぐにビザを貰うことは出来ないか?」と聞くと「心配するな」と心強い返事が帰ってきた。「値段は50,000プラス、エクスプレス代金15,000でいいんだよね?」と聞くと「申請処理で5000と書いてあるだろう」と答えた。やはりこの5000は払わないといけなさそうだ。「では合計70,000CFAですね?」と確認すると「そうだ」と答えた。

受け取りは11:00だと告げられた。今すぐって訳ではないのかーとすこし焦ったが、それでも十分に良い結果なので、ここで引くことにした。

まだ9時なので、日本大使館へ行き、借りてた本を返却し、情報ノートを少し写したりした。まー結局ここには大した情報はなかった。2014年以降は情報が無いし、そもそも北上者は誰もいないようだった。

10時半に中央アフリカ大使館へ戻ると、レセプションの男は何やら時計を指して、まだ早いみたいなジェスチャーをしてきた。さらに男は「インビテーションは無いのか?」と聞いてきて、「ノー インビテーション ノー ビザ」と何処かで聴いたようなセリフを言い出した。「いや、申請したときには何も言わなかったじゃん」と言おうにも英語が通じない。すると「大使は外出中で13時まで戻らない。10,000CFAでインビテーションを作ってやる」と言い出した。「えー!そりゃーないよ。エクスプレス代金払ったのにまた金取るのか?」と言うと、「じゃー13時に大使が戻るまで待ってろ」と突き放してきた。

仕方なく、外のベンチで他の男たちと待つことに。もう11時ちかいが、このままだと午後までもつれる。遅い時間にもガロアブライ行きのバスは出てるのか不明だ。

すると、先程の男が建物の中へ入るように言いにきた。これは領事担当に訴えるチャンスとばかりに、部屋に入るなり、一気に説明を始めた。インビテーションをとる宛もないし、そんなことしてたら明日の護衛隊に間に合わない。なんとかインビテーション無しでビザを出してほしいと訴えたが、領事担当は「インビテーション無しでビザを取るとペナルティを払わなければならない」とさっきとはニュアンスが違うことを言ってきた。因みにパスポートは彼の右側にビザが貼られて置いてあるのがチラッと見えた。このまま隙を突いて奪えば終わりだと一瞬頭によぎったが、やはり説得してパスポートを返してもらうのが正しいと思った。領事担当は「ペナルティを払えば直ぐに大使に話してビザを貰える。時間が無いんだろう」と言ってきたが、「もうビザはパスポートに貼ってあるじゃん」と言うと、「お前は我々には何もくれないのか?」と露骨な賄賂請求に変わった。

「中央アフリカは内線で疲弊してしまったが、人が素晴らしいと言うから、楽しみにしているんだ。ようやく戦争も終わりが見えてきて、これから一気に国が変わるというときに国を見ることはとても有意義な旅になるだろう」と力説して、最後は「御願い!」と三回続けて言うと渋々パスポートをこちらに手渡してきた。

お礼を言って、直ぐに部屋を出た。レセプションにも全く言う筋合いのないお礼を告げて、ゲートを出た。118分。なんとか中央アフリカビザをゲットした。

大きな通りに出てタクシーを捕まえて、マリオンの家に戻った。家族は全員出払っていたが、食事係と掃除係、警備の男がいた。皆にこれから中央アフリカへ向かうと別れを告げた。皆「ボン ボヤージュ」と見送ってくれた。流石に10日もいたので、彼らとも随分仲良くなった。娘達とは全く仲良くならなかったが。

マリオンの家からはバス会社の集まるところまで徒歩圏なので、歩くことにした。久しぶりのバックパックは重く感じる。直ぐに汗が吹き出してきた。

随分南の方にツーリスティックという会社があり、直ぐに出ると言うので乗ることにした。まーどこも聞くと直ぐに出ると言うのだが。


ツーリスティックは期待を裏切らずそれから30分で出発した。これでガロアブライには夜には着くだろう。カメルーンに来て以来、今日は珍しく物事がうまくすすむ日だ。



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