2016/NOV/15 「リーブルビル」

朝起きると今日も雨が降っていた。雨季の旅は本当に滅入る。一瞬、今日は出るのやめようかと思ったが、気持ちを切り替えて出発の準備をした。宿から道に出ると、すぐにリーブルビル行きの車が見つかった。バスではなく、普通の人の車で、リーブルビルへいく用事があるので、人を乗せて金を取りたいので人集めをしていた。値段もバスと変わらない。

車はすぐに出発して、かなりのスピードで進んだ。相変わらす景色はジャングルで、ガボンの国土の殆どがジャングルだということが実感できる。途中幾つか町を通ったが、集落といったレベルで商店が幾つかある程度だった。

ジャングルの中にも道沿いに家が点在している。コンゴでは日干し煉瓦か、コンクリートブロックが多かったが、ガボンに入ってからは壁も木造の家が目立つ。屋根はトタンで、見るからに貧しそうな家だ。高床式ではないので、湿気で壁の木も腐っている家をよく見かける。どの家も道路脇にドラム缶を置き、そこにぶっ刺した木の棒から森で捕まえた獲物(猿、鹿、ワニ、アルマジロ?)をぶら下げて売っている。こんなの誰が買うのか?と思ったが、運ちゃんは車を止めてワニの値段を聞いていた。1mくらいのワニで10,000CFA2,000円)。ブッシュミートにしては結構高い。そもそもガボンは道で売られてる野菜もそこそこ高い。

道中の村では大きくAliと書かれたT-シャツを来ている人を沢山見かけたが、Aliはガボンの大統領の名前で、きっと選挙の時にでも配られた物だろう。村の人々はTシャツが貰えるならと挙ってAliに投票したはずだ。ここには選挙法違反などという小さなことを言う人はない。そんな大統領は現在パリにある100億円の別荘に住んでいるらしい。アフリカはある意味でとても寛容だ。街道には巨大な大統領の看板が検問と同じくらいの数設置されている。ちなみにガボンの検問の数はアフリカでNo.1だろう。

運ちゃんはもうリーブルビルだと言って、次々と人を下ろし始めた。え!ここが?と疑うような汚いところだ。ギニア湾の石油のおかげで一人辺りのGDP80万円を超えると聞いていたので、GDP10万円程度の周辺国よりはるかに栄えているのかと思ったが、そんなに変わりはない。ここはまだ中心ではないだろうが、丘のように起伏ある地形に連なる小汚ない平屋の建物が、道の両側を埋めている。

リーブルビルは安宿がなく、唯一バックパッカーが泊まるのはキリスト教会系の宿だ。Mayson Emillie de Villeneuveという教会運営の信者用の宿泊施設は10,000CFA2,000円)でとても快適な部屋を提供している。白人のシスターは愛想がないが、掃除してる黒人のおばさんはとてもいい人で、なにかと助けになってくれた。キッチンやリビングはないが、シャワーはホットが出るしとても清潔だ。
ここはテントを張らせてくれると聞いていたので、頼んでみると雨だからやめた方がいいと軽い説得にあった。「屋根のある所に張らせてもらえないか?」と頼むと「15000CFA1,000円)」という返答が帰ってきた。「5000はちょっと厳しい」と言うと「いくら持ってるんだ?」というので「4泊するから3000じゃダメかな?」と言うとそれでオッケーが出た。

宿の周りは市場のように活気があり、ミニバスの発着点になっているので便利そうだった。ネットカフェを探しに歩いたが、近所には見つからず、かなり離れたInstitut Francaisというフランスが建てた文化施設の中でみつけた。このInstitut Francaisは西アフリカの旧フランス植民地には大抵あるフランスの文化を広めるための施設で、現地の他の建物より飛び抜けて立派だ。フランスは今でも世界中にフランス文化圏を作ることに邁進していて、本気でアメリカに対抗している。このあたりは敗戦国の日本やドイツには理解しがたいが、アメリカや中国と同じ放射型外交と呼ばれる自国の影響力を世界にめいっぱい広げたいという困った外交方針だ。

フランス語を話しますと言えば援助をするのもどうかと思うが、彼らは西アフリカで英語が第一外国語になることを全力で阻止している。フランスにとってはフランス映画や音楽を広めるだけでなく、現地の資源を開発権を独占し、フランス製品を売りさばくこともできるメリットがある。二次産業は教えないのでいつまでたっても資源を輸出して、海外で作られた製品を買うという負の連鎖から抜け出せない西アフリカの現状がフランスの意図したものであるという黒人は多い。

このInstitut Francaisの辺りがリーブルビルの中心地で、官庁系の建物や、やたらと豪華な大統領官邸が立ち並んでいる。海に面してはいるもののウォーターフロントは、全く整備されておらず、満足に海を眺めるところすらない。空港の方には海沿いに道路が走っていて、砂浜も少しあるが、生活排水が放流されていて、現地人でさえ泳いでない。

大規模なマスタープランが、進んでいるようで中心地の海岸沿いをフェンスが囲んで、中国の建設会社の名前が、現実味のないパースと一緒にデカデカと描かれている。

てっきりオイルマネーでもう少し発展しているものだと思っていたが、リーブルビルは思った以上に何もない町だ。








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